国民年金の保険料が未払い(未納)でも、5年までは後払いできる「後納制度」は平成30年9月に終わってしまいました。
「じゃあもう保険料は納められず、年金額増加の方法はないのか・・・」
と肩を落とされた方に朗報です。
後納以外にも将来もらえる年金受給額アップの方法はいくつかあります!!
今回の記事では、まず後納制度について軽くおさらいをして(追納制度との違いや未納のリスクも紹介)、年金受給額を増やすための具体的な方法をお伝えします!
年金不信が広まっている昨今ですが、老後に終身でお金がもらえる年金は非常にありがたいものです。年金がどれだけあるかによって高齢期の生活は大きく変わりますよ。
老後期のライフプランは「年金」を軸に考えることが普通なので、今のうちから正しい年金の知識を貯めておきましょうね。
年金の後納制度ってなに?追納制度とは違うの?
後納制度の中身に入る前に、ごっちゃになりやすい
- 保険料納付の時効
- 保険料の後納制度
- 保険料の追納制度
について最初にまとめておきますね!
名前 | 内容説明 |
---|---|
保険料納付の時効(2年) | 国民年金の保険料は、納期限から2年が過ぎると納めることができません。これを保険料納付の時効と言います。(参考:国民年金法 第102条) |
保険料の後納制度 (5年or10年) | 保険料納付の時効(2年)を延長し、納期限から5年(10年)までなら、未納の保険料を納めることができるようにした制度です。 |
保険料の追納制度 (10年) | 保険料納付の免除や猶予を受けた人のみが利用できる、保険料の後払い制度です。追納が承認されてから10年前までの「免除・猶予を受けた保険料」を納めることができます。 |
後納と追納は名前が似ているので特に間違えやすいですが
- 後納の対象となる保険料⇒「未納の国民年金保険料」
- 追納の対象となる保険料⇒「免除や猶予をうけた国民年金保険料」
という違いがあることに注意して下さいね。
それでは、今はなき後納制度がどんな内容であったのか、導入の背景はなんであったのかについて簡単に解説していきますよ。
【平成30年9月終了】保険料後納制度の概要
後納制度が出来たのは、2012年(平成24年)です。
導入の理由は大きく分けて以下の3つ。
- ①国民年金のうっかり未納対策
- ②無年金者・低年金者対策
- ③年金財政の改善
上記のように保険料納付を忘れてしまったり、免除や猶予制度を申し込まなかったりして2年を経過した場合は、時効により保険料を納めることができなくなります。
保険料の未納が増えると、納めなかった被保険者の受給できる年金額が少なくなるだけでなく、現在年金を受け取っている高齢者世帯にも影響が出てしまいます。(*)
このような事態を危惧した政府は、保険料納付時効を延長する「後納制度」を期間限定で制定しました。後納制度の変遷は下記の通りです。(参考:国民年金保険料の後納制度(平成30年9月30日をもって終了しました。)|日本年金機構)
期間 | 内容 |
---|---|
平成24年10月1日~27年9月30日 | 保険料納付可能期間が「納期限から10年」までに延長されていた時期。 |
平成27年10月1日~30年9月30日 | 保険料納付可能期間が「納期限から5年」までに延長されていた時期 |
平成30年10月1日以降 | 後納制度は終了し、従来通り「納期限から2年」以内の支払いが求められるように。 |
ちなみに後納制度を利用した人数と保険料徴収額はというと・・・
制度 | 利用者人数 | 徴収した保険料額 |
---|---|---|
10年後納 | 1,184,747人 | 約2,396億円 |
5年後納 | 295,582人 | 約363億円 |
計 | 1,480,329人 | 約2,759億円 |
参考:10年後納制度の利用実績について|日本年金機構
参考:5年後納制度の利用実績について|日本年金機構
平成24年から平成30年までの約6年間で、延べおよそ150万人の方が利用し約2,759億円もの保険料が徴収できた計算になります。
厚労省の年金特別会計の2017年度決算によると、単年度の年金給付費は約54兆円・・・。
それと比べると微々たる金額ですが、これによって受給額増加の恩恵を受けられる人が沢山いますから、制度自体は良い制度だったと言ってよいでしょうね。
【補足】付加保険料の後納制度も平成31年3月31日に終了済
ちなみに、国民年金の受給額上乗せ制度である付加年金の保険料にも後納制度(付加保険料の特例納付制度)がありましたが、これも平成31年3月31日をもって終了しています。
(参考:付加保険料の特例納付制度 平成31年3月31日をもって終了しました。|日本年金機構)
[getpost id=”6736″ target=”_blank”]【確認】保険料納付の時効は2年⇒未納はリスクと心得よう!
既に確認したとおり、現在の国民年金保険料の納付可能期間は納期限から2年です。
後納制度も終わってしまったので、2年を過ぎると保険料が納められなくなります。
「保険料を納めないまま放置してたところで、年金額が減るだけでしょ」
と思った方、これは大きな間違いです。
実は、保険料未納にはかなり怖いリスクがあるんですよ・・・。
もっとも危険なリスクは「障害基礎年金や遺族基礎年金」など、万が一のときの為の年金給付が受けられないリスクです。
障害年金も遺族年金も「保険料納付要件」を満たしていないと支給されません。障害時の生活保障や遺族の生活保障が全く無いのはリスクでしかありませんよ。
参考:年金の未納リスクを社労士が解説!年金を払わない選択肢はない理由【記事未了】
また、最近は国民年金保険料未納に対する強制執行基準も年々厳しくなっており、平成30年度からは「所得300万円以上&未納7ヶ月以上」の方を対象として財産調査や差押えの手続きが進めらています。(参考記事:国民年金の強制執行基準は厳格化の流れ)
強制執行は比較的所得に余裕がある方に対して行われるものですが、それでも突然差押えなんてされると資金繰りが厳しくなってしまいますよね。
支払う余裕がある人は、期日までにしっかりと保険料を払って差押えのリスクを回避しましょう(*)。
一方、金銭面に余裕が無くて”未納”にしている人は必ず以下の「保険料納付免除制度・猶予制度」を活用してください!
経済的な理由で保険料を払えない方は、免除・猶予制度を活用しよう!
国民年金は原則20歳から60歳まで40年間払い続けなければいけません。
しかし、40年間もの長い間保険料をずっと安定して納められるか?というと、予期せぬ出費や失業で金銭的に支払うのが難しい場面もあると思います。
こうした保険料納付が困難な方のために、国民年金には以下のような保険料の免除制度・猶予制度が設けられていますよ
名称 | 概要 |
---|---|
法定免除制度 | 障害者・生活保護受給者・失業者など一定の条件を満たした場合に保険料の全額が免除される制度 |
所得に応じた保険料免除制度 | 保険料納付者本人、その配偶者及び世帯主が一定の所得以下である場合、申請により保険料の納付が免除される制度。 所得に応じて免除される額が変わり、全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除の計4種類がある。 |
50歳未満納付猶予制度 | 保険料納付者本人(50歳未満)及びその配偶者の所得が一定以下である場合、申請により保険料の納付が猶予される制度。 |
学生納付特例(猶予制度) | 保険料納付者(学生等に限る)の所得が一定以下の場合、申請により保険料の納付が猶予される制度。 |
(参考記事:国民年金の免除・猶予制度まとめ【記事未了】)
なお、「免除」あるいは「猶予」を受けると10年前までの保険料が「追納」可能となります。「追納すべきか否か」は多くの人が悩む問題ですよ。
お金に余裕が出てきたら、下記記事を参考に追納するかどうか決定して下さいね!
- 免除を受けている方⇒「年金は追納した方がお得なのか?計算例付で解説!」
- 猶予を受けている方(*)⇒「学生時代に払っていない国民年金は払うべきか?」
ちなみに「猶予期間」は受給資格期間には算入されますが受給額には反映されません。従って「猶予」を受けている人は追納した方がお得になる可能性が高いですよ。
一方で「免除期間」は、基礎年金(国民年金)の国庫負担分が年金受給額に反映されるので、追納すべきか否かは個々人の価値観によってかなり変わってくると思います。
年金額を増やすために知っておきたい手段
原則として、老齢年金は保険料納付済期間(保険料免除・猶予期間等含)が10年ないと、受給することができません。(参考記事:年金受給に必要な資格期間が25年⇒10年に短縮。)
「保険料も納めてないし免除や猶予の申込みもしていない。後納制度も終わってしまった。もう年金はもらえないのか・・・」
あるいは
「一応年金はもらえるけど、納付した期間が少ないからあまり多くの年金は望めそうにないな・・・」
こう思われた方もご安心ください。
実は、60歳を過ぎても以下の2つの方法を使えば、受給資格期間を満たすことができますし年金額も増やす事ができますよ。
- ①国民年金の任意加入制度を利用する(参考記事:国民年金の任意加入被保険者とは)
- ②厚生年金に加入する(参考記事:厚生年金の経過的加算【記事未了】)
制度の詳細は、それぞれの参考記事をご覧くださいね。
【参考】後納制度は復活するか?再開される可能性はどの程度あるのか?
最後に、後納制度が復活する可能性はあるのかについて考えていきたいと思います。
最終的には政府次第ですが、結論からいうと復活する可能性の方が高い!というのが編集部の意見です。理由は以下の2点です。
- ①国民年金の財政は非常に厳しいから
- ②政府は国民に老後資金形成の自助努力を求めているから
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①国民年金の財政は非常に厳しいから
知っている人は多いと思いますが、国民年金の財政状態はかなり危ういです。
政府が発表しているみかけ上の保険料未納率は35%ですが、実はこの未納率の計算には保険料納付免除者・猶予者が含まれておらず、実際の未納率は約60%にもなります。(参考記事:【注意】厚生労働省の発表している国民年金の納付率(未納率)にはカラクリあり!)。
全額きっちりと納付している人の方が少ないのに、制度をきっちりと運営出来ると思いますか?
出来ませんよね。
だから、年金給付費の財源となる保険料収入を増やすために、先ほど紹介したように「国民年金保険料未納者に対する強制徴収」を頑張って行っているのです。
後納制度が復活すれば、一時的に保険料収入は増加しますので、その分国民年金財政は(一時的)に好転します。よって後納制度が復活する余地はあると言えるでしょう。
②政府は国民に老後資金形成の自助努力を求めているから⇒年金が少ない人を救済したい
2019年6月、「老後資金は2000万円不足する」という言葉が大きな話題を呼びましたね。
これは政府が、
「老後を公的年金だけでやりくりするのは難しい。自分でも老後の為の資産形成を頑張ってやる必要がありますよ!」
と意思表示したことと同じです。
だからこそ、いまiDeCoやつみたてNISAなどの私的年金制度が充実していってるわけです。
そして、逆説的に考えると老後資金が不足する理由は「年金額が少ないから」ですよね。
特に自営業者などの第1号被保険者は国民年金にしか加入しませんから、その平均受給額は月額約5.5万円と非常に少ないです。(参考記事:国民年金、実際の平均支給月額は5.5万円)。
保険料を未納にしている人はもっと少なくなります。
政府が自助努力を求めている以上、政府としては、その対価として国民の年金額を増やすための何らかの施策(たとえば後納制度の復活)をする必要性を感じても不思議ではありません。
それに、年金受給額が少ないという理由で生活保護を受ける人が増加すると、それこそ国の財政としては痛手となります(*)。
多くの人が自助努力で資産を形成し、生活保護を受けずに済めば日本の財政も良くなります。
そういう意味で、巡り巡って国民の資産形成や財政再建の手助けとなる可能性がある「後納制度」が復活する余地はかなりあると考えられるのではないでしょうか。
復活するとすれば期間限定が濃厚
保険料の後納制度は、被保険者(国民)は受給できる年金額が増加しますし、国も(一時的には)年金財政が潤うという点で非常にWin-Winな制度です。
ただ、後納制度を恒久的な制度にしてしまった場合には、「あと〇〇年は後納できるし今月は払わなくてもいいか!」という人が増え、保険料収入の増加につながらない可能性が有りますよね。
以上を踏まえると「後納制度は期間限定措置としてもう1度復活する可能性が高い」というのが編集部の意見です。ただ、いつ復活するかは全然分かりませんけどね・・・。
まとめ
今後、受給できる年金の実質的価値はますます下落していく見込みです。(参考:「令和元年度財政検証のレビュー。年金の実質的価値2割減少はもはや避けられない【記事未了】」)
本当、いまの若い世代からすると年金制度なんて信用できないものでしょう。
しかしながら、昔も今もこれからも、老後資金の要となるのは「インフレヘッジされたお金が終身で支給される公的年金である」という事実は変わらないはずです。(老後資金に占める年金の割合はどんどん減っていきますけどね・・・。)
そのため、もし後納制度が復活したらぜひ積極的に活用してください。
また、来たるべき老後に備えて何をすべきなのか?について知りたい方は下記の記事も参考にしてくださいね。
[getpost id=”14069″ target=”_blank”]これからは、年金だけを当てにするのではなく自らの力で老後資産を作っていく”自助努力”が大切な時代になっていくことは間違いありませんよ。