標準報酬月額の計算ができるようになった女性

給与明細に出てくる社会保険料って高いですよねぇ。

特に「厚生年金保険料と健康保険料(+介護保険料)」がめちゃくちゃ高くてびっくりしませんか?

おそらく、多くの人は自分の社会保険料って本当にこれで合っているの?と思っていることでしょう。

そこで今回の記事では、あなたの社会保険料を算出する元になる「標準報酬月額の考え方」から「標準報酬月額からあなたの社会保険料を求める方法」までを流れにそって図解入りで分かりやすく解説していきたいと思います。

「標準報酬月額及び社会保険料」は給与担当者が計算を間違えることも多いので、知らないうちに保険料が控除されすぎている!なんてこともよく有ります。

正しい計算方法を知っておかないと損をすることもあるので、ぜひ最後まで読んでみて下さいね!

注:健康保険の主体には「全国健康保険協会(協会けんぽ)」と「健康保険組合」の2つがありますが、今回の記事では多くの中小企業で利用されている「協会けんぽ」を例に説明していきます。

ただし、基本的な考え方は「健康保険組合」の場合も同じですので、健康保険組合に加入されている方もぜひご参照下さいね。

「標準報酬月額」とは?

給与明細とお金

標準報酬月額とは、厚生年金保険料・健康保険料を簡単に算出するために使用される「便宜上のあなたの報酬額」の事を指し、一定金額ごとに区分された報酬月額表(等級表)にあなたの給与を当てはめる事により決定されます。

ちなみに標準報酬月額の区分は、健康保険の場合で第1級(58,000円)~第50級(1,390,000円)に、厚生年金では第1級(88,000円)~第31級(620,000円)に分けられます。

原則として毎年1回7月に、4月・5月・6月に支払われた給与(報酬)を元に計算されて、当年9月~翌年8月までの厚生年金保険料等の計算に使います。なお、このように年1回標準報酬月額を決定することを"定時決定"と言います。(標準報酬月額の決定タイミングの詳細は後述。

標準報酬月額の"報酬"に該当するもの・しないもの

マルバツを出す女性

では、「標準報酬月額」の算定のもとになる"報酬"にはどのようなものが該当するのでしょうか?

この点、以下の2つのいずれかを満たすものが報酬とされています。

(ア)被保険者が自己の労働の対償として受けるものであること。
(イ)事業所から経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計にあてられるもの。

具体的には以下の通り。

報酬に該当するもの
  • 基本給
  • 能率給
  • 役職手当
  • 勤務地手当
  • 家族手当
  • 休職手当
  • 通勤手当(*1)
  • 住宅手当
  • 残業代・残業手当
  • 年4回以上支給される賞与
*1 半年分の定期代などまとまった金額として支給される時は1ヶ月分に換算して計算。なお、通勤手当を「報酬に含めるべきかどうか」がよく議論されています。詳細は「通勤手当は標準報酬月額に含まれます!手取りが減る以外の影響は?」をご参照下さい。
報酬に該当しないもの
  • 年3回以下の賞与(*2)
  • 退職金
  • 出張旅費(実費弁償的なもの)
  • 見舞金や結婚祝い金(恩恵的に受けるもの)
  • 大入り袋(臨時に受けるもの)
  • 傷病手当金(保険給付) など
*2 社会保険料は毎月の報酬だけでなく"賞与(ボーナス)"にも課せられます。具体的には、支給された賞与から千円未満の端数を切り捨てた金額を"標準賞与額"として社会保険料を計算します。

参考:社労士&税理士が解説!賞与にかかる社会保険料の計算の仕方【記事未了】

そのほか「報酬」に関して知っておいてほしい点は以下の2つ。

  • 手取り額ではなく税引前の支給額が"報酬の範囲"となる
  • 通貨だけでなく現物で支給される給与も"報酬"になる(現物給与の報酬額への換算は該当年度の「全国現物給与価額一覧表 | 日本年金機構」をご参照下さい。)

以上をふまえて、「報酬に該当するもの・しないもの」を詳しくまとめた表がこちらです。適宜参照して下さいね。

標準報酬月額の報酬に該当するもの・しないもの(参考:標準報酬月額の定時決定等の事務取扱いに関する事例集 | 日本年金機構厚生年金保険法第3条1項3号など)

自分の現在の標準報酬月額(等級)の調べ方

これまでの説明で「標準報酬月額の意味」は分かったと思うので、次は実際に今現在自分の標準報酬月額がいくらなのか?を調べてみましょう。

調べ方は簡単。

「給与明細の厚生年金保険料(又は健康保険料)の金額をチェックして標準報酬月額表に当てはめる」

だけです。

ただし、注意点があります。

標準報酬月額表(保険料額表)は「協会けんぽのこちらのページ(都道府県毎の保険料額表)」から見れますが、「①あなたの勤務地(都道府県レベル)及び②給与対象年月」によって使う表が異なりますので、正しいものを使用するようにして下さい。

以下、実例を見ながら「自分に適用されている標準報酬月額」を調べる方法を見ていきます。

架空の給与明細がこちら。

架空の給与明細

上記給与明細で必要な情報は以下の3つ。

・勤務地:東京
・給与対象年月:平成31年度5月度(令和元年5月度)支払分
・厚生年金保険料:25,620円

協会けんぽの該当ページ内の「平成31年度保険料額表」をクリック⇒「平成31年度保険料額表(平成31年4月分から)」をクリック⇒「被保険者の方の健康保険料額の東京」をクリック、という形で該当の標準報酬月額表を探します。

それがこちら。

標準報酬月額表から標準報酬月額を算出する手順

今回は厚生年金保険料(25,620円)から標準報酬月額を求めます。

STEP①:上表の右側にある「厚生年金保険料の折半額(*)」の数字から25,620円を探す

* 健康保険料や厚生年金保険料は事業主と折半です。給与明細には自分の負担額のみ表示されるので、該当の数字を探す時は「折半額」のところを見て下さい。

STEP②:STEP①が完了したら、25,620円と同じ行にある「標準報酬の列」を見る。今回であれば、標準報酬月額は280,000円で等級(健康保険:21等級・厚生年金:18等級)という事になります。

自分の標準報酬月額を調べる方法は簡単ですね!

【よく分かる】標準報酬月額と社会保険料の算出方法!

電卓で計算

続いて、実際に自分で標準報酬月額及び社会保険料を計算してみましょう。

<<計算の前提>>

・標準報酬月額の決定方法:定時決定
・勤務地:東京
・年齢:38歳
・平成31年4月の報酬:294,000円
・平成31年5月の報酬:288,000円
・平成31年6月の報酬:297,200円

上記前提を元にして、標準報酬月額及び社会保険料を算出してみましょう。

<<計算の実例>>

STEP①:4月・5月・6月に支払われた報酬の平均額を求める

(294,000円+288,000円+297,200円)÷3=293,066円

STEP②:標準報酬月額表から報酬月額を探す

続いて、標準報酬月額表の「報酬月額」列を見て「293,066円」がどこに当てはまるのか探します。

標準報酬月額表から報酬月額を探す

今回は報酬の平均が293,066円ですから、上画像の赤枠で囲ったところ「290,000~310,000」に該当し、標準報酬月額は300,000円という事になります。

STEP③:STEP②で見つけた標準報酬月額と同じ行にある健康保険料及び厚生年金保険料を探す

報酬月額から社会保険料を求める

これより

厚生年金保険料:27,450円
健康保険料(*):14,850円

であることが分かります。

* 40歳以上65歳未満の方は介護保険第2号被保険者に該当し、介護保険料を負担しなければなりません。しかし、今回の事例は38歳で介護保険の被保険者には該当しないため、上画像の「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」の列を使用します。

以上で終了です。お疲れ様でした!

なお、今回は社会保険料の中でも「健康保険料と厚生年金保険料」に絞って事例を出しましたが、毎月の給料からは他にも雇用保険料や税金が引かれますね。

自分の手取り額が果たして本当に合っているのか?

完全に計算できるようになりたい方は、「プロが教える給与計算のやり方~社会保険料も税金も計算できるようになる【記事未了】」を参考にして下さいね!

料率からでも社会保険料は計算できる

さきほど、標準報酬月額表から厚生年金保険料等を算出する方法を見ましたが、実は標準報酬月額が分かっていれば保険料率をかけるだけで社会保険料を計算することができます。

このように、月額表には%が記載されていますね。

標準報酬月額料率

さきほどの事例では標準報酬月額が30万円でしたから、以下のような計算式で求める事が可能です。

厚生年金保険料:300,000円×18.3%÷2=27,450円
健康保険料:300,000円×9.90%÷2=14,850円

注:月額表の%は事業主負担分も合わせたパーセントです。そのため、本人負担を出すためには「2」で割ってあげる必要があります。

なお、昨今の少子高齢化の影響により社会保険の料率はものすごい勢いで上がっています。下記リンク先で過去からの推移をまとめているので、興味のある方はチェックしてみて下さい。そりゃ手取り減るよな・・・と思うはずです。

標準報酬月額関連のよくある質問

FAQ

合わせて標準報酬月額周りでよく出てくる質問にも回答しておきます。

定時決定以外に標準報酬月額決定のタイミングはありますか?

5を出す女性

今回の記事では、標準報酬月額の決定タイミングとして"定時決定"を例にあげて見てきましたが、標準報酬月額の決定タイミングはそれだけではありません。

主として以下の5つが決定タイミングとして挙げられます。(項目名をクリックするとそれぞれ詳細ページへ飛びます)。

項目タイミング及び内容
資格取得時決定
新たに厚生年金の被保険者になった時の標準報酬月額の決定方法。報酬の支払実績がまだ無いため、就業規則や労働契約等から判断した見込額(残業代含)によって標準報酬月額を決定する。
定時決定
年1回7月に、4月・5月・6月に支払われた報酬を元に算定。決定された標準報酬月額は原則として当年9月~翌年8月まで使用される。
随時改定
大幅に報酬が変動した場合など、資格取得時決定や定時決定で決まった標準報酬月額を使用すると実態と大きな乖離が発生する時に利用される改定。
育児休業等終了時改定
育児休業や産前産後休業等が終了した被保険者に関して、育児休業等終了後の就業状況・報酬に応じた保険料負担を実現するための改定
産前産後休業終了時改定④と同じ。

いずれも社会保険料負担額を適正値にするために行われる改定です。

なお、厚生年金の場合、「養育期間標準報酬月額の特例」と言って、子育て期間にある被保険者の救済措置制度もあります。詳細は「養育期間標準報酬月額の特例【記事未了】」をごらんください。

出産手当金や傷病手当金の元になる標準報酬月額及び手当の求め方は?

出産手当金や傷病手当金も「標準報酬月額」を利用するに違いはありませんが、手当の金額は原則として以下のような計算式で求めます。

支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均額÷30×(2/3)

定時決定等で利用されている標準報酬月額がそのまま利用されるわけではないことに注意です。詳細は協会けんぽの該当ページを参照して下さい。

出産手当金 | 全国健康保険協会
傷病手当金 | 全国健康保険協会

標準報酬月額は転職前後で引き継がれるの?

引き継がれません。

転職した以上、転職先で新たに被保険者となるため「資格取得時決定」によって標準報酬月額が決定されます。

まとめ

標準報酬月額という言葉を見ると、なんだか難しそうだなぁという印象を受けてしまいますが、流れに沿って見てみると「意外に簡単では?」という印象を持った人も多いのではないでしょうか。

ポイントは「報酬に該当するもの・しないもの」の判別ができるかどうかです。

当記事の「該当セクション」とご自身の給与明細を照らし合わせて「自分の報酬額」さえ算出することができれば、標準報酬月額と社会保険料の計算は簡単ですよ。

ぜひ一度やってみて下さいね。

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