通勤手当は標準報酬月額に含まれる

所得税では非課税となる通勤手当(交通費)。

当然、社会保険料算定の基礎となる標準報酬月額にも含まれないはず!と思っていませんか?

残念ながら、「自宅」⇔「会社」間の通勤手当は標準報酬月額に含まれます!定期代の金銭支給であれ、定期券の現物支給であれ含まれます。

標準報酬月額が高くなれば社会保険料も高くなるので、通勤手当が多ければ多いほど手取り額が減ってしまいます。交通費が高い人の中には、不公平感を感じている人も多いでしょう。

でも、標準報酬月額が高くなることはデメリットばかりではありません。

そこで今回の記事では「通勤手当が報酬に含まれる理由」を見るとともに

・通勤手当が増えるとどれくらい手取りが減るのか?
・手取りの減少以外にどんな影響をもたらすのか?(メリット・デメリット形式で解説で紹介)

などを解説していきます。

通勤手当を標準報酬月額に算入することに関しては、賛否両論あります。みなさんもこの記事をじっくり読んで、是非を検討してみてください。

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そもそも標準報酬月額の定義や計算方法がイマイチよくわからない……という方は、「標準報酬月額とは?調べ方から社会保険料の計算方法まで分かるパーフェクトガイド」を先に読んでくださいね。

通勤手当が標準報酬月額に含まれる理由

理由

なぜ通勤手当が標準報酬月額に含まれるのかと言うと、健康保険法3条5項や厚生年金保険法 第3条1項3号において"報酬"が以下のように定義されており

(報酬の定義) 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。

政府や行政の解釈として、通勤手当は上記の「手当」に該当するとされているからです。(参考:厚生年金保険の保険料|日本年金機構)

なお、ここで言う通勤手当とは「自宅と会社間の往復」に関する交通費のことです。出張旅費や事業所間の移動など実費精算的なものは含まれません。

【参考】通勤手当が報酬に含まれるのはおかしいのでは?

疑問に思う女性

通勤手当が報酬に含まれるとなると、通勤手当の多寡によって負担する社会保険料の額が変わります(イコール手取り金額も変動する)。

これ、おかしいと思いませんか?

実際、通勤手当を報酬に含めることの正当性に関しては国会等でも議論されており、問題視している人も多いです。所得税では非課税なのに、社会保険だと保険料がかかるのは統一感がなく矛盾しているようにも感じますしね。

この点、書き出すと長くなってしまうので別途「なぜ交通費が標準報酬月額に含まれるのか?【記事未了】」でまとめています。報酬に通勤手当を含めることの正当性や行政の解釈に興味がある方はこちらもご参照下さい。

一言メモ
通勤手当が報酬に含まれないとなると、「本来給与で払うべきものを通勤手当として支払って社会保険料負担を減らす」という、悪質な社会保険料逃れをする事業主が出てくる可能性があります。そのため、行政として対応が難しい問題であることは間違いありません。

通勤手当の多寡でどの程度社会保険料は変化するか?(手取り額はいくら減る?)

続いて、通勤手当の金額が変わると、どの程度社会保険料が変化するのか?以下のような事例で見てみましょう。

<前提>
・Aさんの総報酬額30万円(給料28万円、通勤手当2万円)
・Bさんの総報酬額28万円(給料28万円、通勤手当なし)
・勤務先はいずれも東京都
・協会けんぽで社保に加入

AさんもBさんも給料は同じ。違うのは通勤手当があるかないかです。

標準報酬月額表にあてはめてみましょう。

標準報酬月額表での計算事例
(出典:平成31年度保険料額表(平成31年4月分から)-東京| 全国健康保険協会)

重なって少し分かりにくいですが、赤枠で囲った部分がAさんの社会保険料で、青枠部分がBさんの社会保険料です。

結果として以下の表から分かるように、社会保険料の負担額は月額で2,820円変わってきます。年間では33,840円の差です。

社会保険料AさんBさん差額
健康保険料13,860円14,850円990円
厚生年金保険料25,620円27,450円1,830円
合計39,480円42,300円2,820円
注:40歳以上65歳未満の方の健康保険料には介護保険料も含まれるので、上表の「介護保険第2号被保険者に該当する場合」を利用して下さい。今回は二人とも40歳未満であると想定して計算しています。

給料は同じでも通勤手当が違うだけで、手取り額もこれくらい変わってしまう可能性があるという事です。

もちろん、社会保険料の金額が変わると税金の額も変わるので、上表ほど手取り額に差が出るわけではありません。

しかし、それにしてもなんだか釈然としませんよね・・・。通勤手当は可処分所得にならないわけですから、無駄に手取りが減っただけと感じるのが普通でしょう。

3ヶ月分や半年分の定期代がまとめて支払われた時の取扱い⇒1ヶ月分に換算

標準報酬月額は年1回、4月・5月・6月に支払われた報酬を元に決定されるので、「4月に半年分の定期代が支払われたら標準報酬月額が高くなってしまうのでは?」と不安になる人も多いです。

しかし、安心して下さい。数カ月分の定期代がまとめて支給された場合、月割りで計算します。

例えば、6ヶ月分の定期代が12万円であれば、2万円(12万円÷6ヶ月)を1月の報酬として標準報酬月額に含めます(参考:社会保険における報酬の範囲(通勤手当)(保文発7241号)| 労働法ナビ)

標準報酬月額が増加することによるメリット・デメリット

マルバツ

前のセクションで通勤手当が増えると(=標準報酬月額が増えると)、手取り額が減るというデメリットを見ました。

では、標準報酬月額が増えると他にどのような影響があるのか?メリット・デメリット形式で見てみましょう。

<<メリット>>

メリットは以下の2点ですね。

  1. 厚生年金の受給額が増える
  2. 受給できる傷病手当金出産手当金の額が増える

両者はいずれも「標準報酬月額」に基づいて算出されます。従って、標準報酬月額が増加すれば貰える金額が増加するというメリットがあります。

注:ただし、傷病手当金や出産手当金は支給要件を満たさないと貰えないものですから、お得(メリット)と感じない人もいるかもしれません。

<<デメリット>>

一方、明確なデメリットには以下のようなものがあります。

  1. 手取りが少なくなる
  2. 高額療養費の自己負担額が増加してしまう恐れあり
  3. (60歳以上の場合)在職老齢年金【記事未了】の支給停止基準に該当してしまう恐れあり

①は既に説明したとおり。

②、③に関しては「標準報酬月額が高い⇒手取りが多い⇒国からの給付は不要」と判断されて、給付カットになる流れです。直感的に自分の労働の対価とは考えにくい通勤手当によって、このようなデメリットがあるわけですね。

まとめ

ポイントを指差す女性

以上、見てきたように通勤手当は標準報酬月額に含まれるので、手取りの減少に繋がります。

一応、デメリットだけでなく「将来の厚生年金受給額が増える」「出産手当金等の金額が増える」などのメリットもありますが、現在の手取り収入が減るというデメリットを超えるレベルのメリットではないな・・・と思った人が多いのではないでしょうか?

せめて、税金と社会保険で「通勤手当」の取扱を統一してくれたら良いんですけどね。

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