離婚届と札束と印鑑とペン

離婚は本当に大変です。

「離婚するかどうかを決める」だけでも大変なのに、財産分与や養育費の取り決めなど色々な手続きを付随して行わなければならないので、本当にパワーがいります。

そして、離婚時の取り決め・手続きの一つに「夫婦の年金分割手続き」があります。離婚後、経済的に厳しくなることが多い女性にとって、老後の年金を増やすことが出来る年金分割の制度はとてもありがたいですね。

しかし、きちんと年金事務所で手続をしなければ年金分割は行われません。

しかも請求期限は離婚後2年

制度を知らなかった、手続きに手間取っていたらいつの間にか期限が過ぎていた・・・という理由で、もらえるはずの年金が貰えなくなってしまう事も良くあります。

でも大丈夫です。きちんと手続方法を抑えてしっかり準備しておけば、スムーズに手続きを終えることができますよ。

離婚後2年を過ぎてしまうと手続は出来なくなりますので、ぜひこの記事を読んで期限内に手続を完了してくださいね。

なお、よくある質問を合わせて考えると記事のボリュームがかなり多いので、一旦ブックマークしてもらって時間のある時に一気読みして頂く方が良いかもしれません!

年金分割は基本的に収入が多い方→低い方へと年金記録が譲渡されます。

この記事では多くの方のイメージに沿うように、収入が多いので記録を譲渡する方(年金が減る方)=夫、収入が少なく記録を譲渡してもらう方(年金が増える方)=妻として表現しています。予めご了承下さい。

妻のほうが収入が多く、妻が夫に年金記録を譲渡する場合は逆に置き換えて下さい。

この記事の目次

離婚時の年金分割制度とは?

年金手帳を持ち首をかしげる夫婦

そもそも年金分割とはどのような制度なのでしょうか?意外と誤解されていことが多いので、最初にきちんと定義を確かめておきましょう。

年金分割とは、婚姻期間中の夫婦の厚生年金記録の合計を分割する制度です。

「支給される年金が多い方の年金の一部が、年金が少ない方に振り込まれる」ということではないので、注意して下さいね。

あくまで分割されるのは”婚姻期間中の夫婦の厚生年金の標準報酬の記録”です(参考:当事者間で分割される標準報酬とは何ですか。|日本年金機構

夫婦の年金記録を分割することよって自分の年金記録が変わるので、将来年金を受け取るときはこの上書きされた年金記録に基づいた金額が支給されるようになるということです。

<年金分割のイメージ>
年金分割のイメージ

なお、繰り返しますが、分割対象となるのは”婚姻期間中の厚生年金の標準報酬の記録”です。

・国民年金の年金記録
・婚姻前の年金記録
・国民年金基金や確定拠出年金、企業年金、個人年金などの上乗せの年金記録

これらは年金分割の対象外なので注意してくださいね。(注:会社の退職金や個人年金などの部分は「年金分割」ではなく「財産分与」で対応することになります。)

年金分割ができる条件は?夫が自営業者の場合は要注意!

腕を組む老夫婦

年金分割はどんな夫婦でも出来るわけではありません。年金分割ができるのは、以下に該当することが絶対条件です。

  • 婚姻期間中、夫婦のいずれかに厚生年金の加入記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること
  • 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと

参考:離婚時の年金分割|日本年金機構

年金分割をするためには”厚生年金(旧共済年金含む)の記録”が必要なので、元夫が厚生年金に加入していない自営業者だと年金分割はできないので注意しましょう。

ただし、婚姻期間中に少しでも厚生年金加入者であった期間があるならば、その期間分のみ年金分割の対象となります。

年金分割をしても老齢年金の受給資格期間は増えない

カレンダーの上のバツマーク

老齢年金を受給するためには「保険料納付済期間・免除期間・合算対象期間の合計が10年以上あること」が必要です。

しかし、年金分割によって分割されるのは、"年金額の算定の基礎となる標準報酬"だけです。年金の受給資格期間が増えたり減ったりすることはありません。(参考:分割を受けると厚生年金の受給資格期間も満たしたことになるの?|日本年金機構

年金分割をしても、未納期間が長くこの受給資格を満たしていなければ、年金自体がもらえないことになりますのでご注意下さい。

ただし、第3号被保険者期間は自分で保険料を納付していなくても、保険料納付済み期間の扱いとなるので、10年という受給資格期間に関してそれほど心配する必要は無いかもしれません。

参考:漫画で分かる!国民年金の第3号被保険者制度の仕組み。【記事未了】

注:年金分割をしても基本的に受給資格期間に増減は発生しませんが、遺族厚生年金の支給要件(長期要件)における「被保険者であった者」としての期間には参入されます(参考:厚生年金保険法第78条の11

年金分割には「3号分割」と「合意分割」の2種類ある

3号分割と合意分割のイラスト

年金分割には「3号分割」「合意分割」の2種類の制度があります。

最初に簡単に両者の比較を表形式でしておきます。

項目合意分割3号分割
合意の必要性有り無し
分割の対象期間婚姻していた期間全て2008年(平成20年)4月1日以後の婚姻期間のうち第3号被保険者であった期間
按分割合上限50%(下限は分割を受ける側の持分が減少しない範囲)必ず50%の按分

それでは、それぞれの制度について詳しく解説していきますね。まずは3号分割から。

3号分割は専業主婦やパートで働く妻のための新しい制度

ガッツポーズをする主婦

3号分割は2008年(平成20年)に作られた新しい制度で、”2008年4月1日以降第3号被保険者だった期間は、夫の厚生年金の加入記録の半分が自動的に分割される”という仕組みです。(参考:離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)|日本年金機構

従来まで唯一の分割方法だった合意分割(後述)に比べて、手続きが簡単に行えるようになりました。

なお、3号分割が利用できるのは、以下の条件に該当した場合のみです。

  • 2008年5月1日以降に離婚していること
  • 2008年4月1日以降に、第3号被保険者(夫に扶養される妻)の期間があること
  • 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと

合意分割が当事者間の取り決めや裁判の結果によって按分割合(*)を変えられる可能性があるのに対し、3号分割の按分割合は自動的に必ず50%となるのが大きな違いです。

*按分割合とは、夫婦の年金記録の合計から、分割を受ける側(=主に妻)がもらえる年金記録の割合のこと。

ただし、3号分割の制度が始まる以前の婚姻期間は対象外なので注意が必要です。つまり、2008年3月以前の婚姻期間については、たとえ妻が第3号被保険者であったとしても合意分割によって年金分割をしなければならないという事です。

合意分割は、3号分割の対象外となるすべての期間が対象

通帳を見て話し合う夫婦

合意分割はその名の通り、夫婦間の合意によって年金記録の按分割合を自由に決定し年金記録の分割を行うこと言います。(ただし上限の50%まで

平成19年4月1日以後に離婚等をし、なおかつ以下の条件に該当する場合、合意分割の利用が可能です。

  • 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること
  • 当事者双方の合意又は裁判手続により按分割合を定めたこと
  • 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと

(参考:離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)|日本年金機構

3号分割と大きく異なるのが、妻の厚生年金記録を夫の厚生年金記録に合算してから分割をするということです。

3号分割と違い、妻が婚姻期間中も会社員として働いていた場合は、同じ50%の按分割合でも3号分割より譲渡される記録は少なくなります。

分割割合のイメージ

例えば夫が年収400万円、妻が年収200万円の場合、按分割合50%とすると、夫300万円、妻300万円となるように夫から妻へ年収100万円分の厚生年金記録が譲渡されます。

しかし3号分割だと、同じく夫の年収が400万円で按分割合50%だとしても、年収なしの妻には200万円分の厚生年金記録が譲渡されます。

また、もし妻が夫と全く同じ収入だった場合は分割しても実質的に意味がないことになりますし、逆に妻のほうが収入が多ければ、妻から夫へ年金記録を分け与えることになります。

このように、合意分割は、状況によってはあまり妻の年金記録が増えなかったり、逆に減ってしまったりすることもあるのです。

対象期間が2008年4月以降の婚姻期間に限られる3号分割とは異なり、合意分割の対象期間は「全ての婚姻期間」となります。

また、後述していますが3号分割期間と合意分割期間の両方を持つ場合、合意分割の請求をすれば自動的に「3合分割」の請求もしたことになります。一方で両方の期間を持っていても3号分割のみの請求をすることも可能です。

年金分割の請求期限は離婚翌日から2年!忘れたらアウトなので必ず期限内に手続きすること

カレンダーの上の砂時計

年金分割の仕組みと自分が年金分割ができるかどうかが分かったら、次に必ず確認しておきたいのが年金分割の請求期限です。

年金分割は、原則として離婚(*)した翌日から2年以内でなければ手続きができません。(参考:離婚時の年金分割|日本年金機構

*婚姻を取り消した場合、事実婚関係にあった人が第3号被保険者の資格を喪失した場合(=扶養から外れた場合)も含まれます。

「離婚後2年」と聞くと、結構時間に余裕がありそうに思えますよね。

しかし、実はこの請求期限切れによって年金分割ができなくなるケースはよくあるのです。

特に合意分割の場合、按分割合の話し合いが難航したり、なかなか必要書類が集まらなかったりして、思った以上に手続きに時間がかかることがあります。

さらに、別居していると相手の協力がなかなか得られなくなることも多く、待っているうちに自分も忙しくなってすっかり忘れてしまった・・・ということも珍しくありません。

請求期限後になんとか年金分割ができないかと思っても、残念ながら公的な方法ではもう年金分割はできません。当事者間の話し合いによって対処するしかなくなってしまいます。

ですから、年金分割の手続きはできるだけ早めに着手できるようしっかり準備しておきましょう。

年金分割の請求期限の特例

時計を持つ女性

年金分割の請求期限は原則として離婚後2年です。

ただし、”請求期限前に按分割合に係る申し立て(調停や審判申立等)を行い、その結果が請求期限の直前もしくは請求期限を過ぎた後に決まった場合”は、は特例として該当した日の翌日から1ヶ月後までに期限が延長されます。

詳細はこちらのページの「離婚時の年金分割|日本年金機構」の分割請求の期限セクションを御覧ください。

請求期限が短縮される場合もあるので注意!
万が一、元配偶者が離婚後に死亡した場合は、請求期限が死亡日より1ヶ月以内に短縮されます。

レアケースではありますが、知らない間に元配偶者が死亡していて請求期限が切れてしまうこともあり得ますので、やはり手続きは早めに済ませておくほうが良いでしょう。

年金分割の手続きは原則として年金事務所で行う

年金事務所の写真

年金分割の手続き先は、3号分割でも合意分割でも共通です。

日本年金機構に電話で確認したところ、基本的に手続きはすべて年金事務所で行うことができるとのことでした。

2015年(平成27年)に共済年金と厚生年金が一元化されたことにより、夫婦のどちらかが厚生年金に加入していた期間があれば、すべて年金事務所で手続きが行えるようになったようです。(どちらかが加入している共済組合の事務所でも可能です)

ただし、

  • ①婚姻期間の全期間において、夫婦の両方が共済年金だけに加入しているor夫は共済年金に加入し、妻は専業主婦の場合(=どちらも婚姻期間中に厚生年金の加入期間がない場合)
  • ②2015年(平成27年)10月1日以前に夫婦のどちらかが既に共済年金の年金受給者であった場合

上記に該当する場合は、共済年金の事務所に行く必要があります。

①の場合は、実際は年金事務所だけでも手続きは可能ですが、結局年金事務所から共済組合へと書類が回されるので、手続きに時間がかかってしまいます。

可能なら、どちらかが加入している共済年金の事務所で手続きをしたほうがスムーズです。

一方②の場合は、一元化前の年金記録なので、年金事務所だけで手続きを完了することができません。まずは加入していた共済組合の事務所に相談しましょう。

3号分割と合意分割、どちらが適用されるか確認!

パソコンの前で手帳を確認する女性

年金分割の手続きには3パターンあります。パターンによって手順や必要書類が変わるので、自分がどれに当てはまるかをチェックしておきましょう。

  1. 3号分割のみ該当する場合
  2. 3号分割と合意分割の両方が該当する場合
  3. 合意分割のみ該当する場合

①3号分割のみ該当する場合

2008年(平成20年)4月以降に結婚し、妻が離婚までずっと第3号被保険者だった場合、3号分割の手続きをすることになります。

3号分割の手続きは夫婦のどちらか一方だけで年金分割の手続きができる上、手順もシンプルになるので楽な手続方法だと言えます。

②3号分割と合意分割の両方が該当する場合

両方の分割方法が該当するのは、”婚姻期間中、妻に第3号被保険者の期間とそれ以外の被保険者の期間があった”もしくは”ずっと第3号被保険者だが、2008年(平成20年)3月以前に結婚している”場合です。

この場合、実際の手続きは合意分割の手続きだけで大丈夫です。合意分割の手続きをすれば、自動的に3号分割の手続きもしたことになるからです。(参考:離婚時の年金分割|日本年金機構

なお、両方に該当する場合でもあっても「3号分割のみ」請求することが可能です。(反対に合意分割をすると3号分割は必ず請求したことになる。)

③合意分割のみ該当する場合

”婚姻期間中ずっと共働きだった場合”や、”第3号被保険者だった期間が2008年(平成20年)3月以前にしかない場合”は、合意分割の手続きとなります。

3号分割だけで良いケースは限定されますが、該当すれば手続きはグッと簡略化されます。まずは3号分割だけで良いかどうかを確認しておきましょう。

3号分割の手続き方法

書類を書く主婦

まず、3号分割の手続きで抑えておきたいポイントは3つ。

・手続きは1人でできる。相手の合意や協力の必要がない
・按分割合は必ず50%となり、機械的に処理される
・年金事務所で請求しなければ年金分割はできない

合意分割だと、按分割合の決定や必要書類の入手に双方の協力が必要です。

しかし3号分割は、極端に言えば夫に内緒で妻1人で手続きをしても、夫の年金記録の50%がもらえるのです。手続きの手間がかなり省かれていますね。

ただし気をつけたいのが、「請求しなければ年金分割されない」ということです。

「3号分割は離婚したら自動的に年金が分割される」と思って手続きをしない人も少なくないので注意しましょう。

3号分割の手続きの流れと必要書類

書類を書く手

3号分割の場合、離婚後に以下の書類を揃えて年金事務所に行くだけで手続きは完了します。(参考:離婚時の年金分割について|日本年金機構

なお、日本年金機構の案内にはありませんが、本人確認書類朱肉を使うタイプの印鑑も持参しておいたほうが安心です。

  • 自分の年金手帳または基礎年金番号通知書またはマイナンバーがわかる書類
  • 夫婦それぞれの、婚姻期間を明らかにできる書類(戸籍謄本や戸籍の全部事項証明書など)
  • 請求日前1ヶ月以内に作成された、相手の生存を証明できる書類(住民票や戸籍の抄本、戸籍の個人事項証明書など)
  • 離婚はしていないが、事実上離婚状態であることを理由に3号分割の請求をする場合は、その状態にあることを明らかにできる書類(*
  • 事実婚関係にある期間があった場合は、その事実を明らかにできる書類(住民票など)
*妻が扶養から外れて第1号被保険者となっている場合、年金事務所にて事実を確認できれば書類は不要です。

しかしその記録が確認できない場合は、別居が確認できる住民表、もしくは事実上離婚していることを明記した任意で作成した同意書(夫婦の署名入り)が必要となります。(年金事務所に電話で確認済み)

書類が不要の場合があるので、まずは記録が確認できるか年金事務所に確かめておくと良いでしょう。

上記の書類を添付して、「標準報酬改定請求書」を記入し窓口に提出して下さい。

様式はオンラインでダウンロードもできますが、書き方が難しいので窓口からもらってその場で教えてもらいながら書くほうが間違いないでしょう。

そして年金事務所での手続きが済んだら、「標準報酬改定通知書」という通知が夫婦それぞれの元へ届きます。これで手続きは完了です。

既に年金を受給している人は、年金分割の請求をした翌月分の年金から金額が改定されるようになります。(参考:現に年金を受給している人については、分割により、その受給している年金額は改定されるのですか。|日本年金機構

合意分割の手続方法の流れは5STEP

5の数字を持つ眼鏡の女性

合意分割の手続きは、3号分割に比べるとやるべきことが多いです。最初にしっかりと流れを把握して、スムーズに手続きができるようにしておきましょう。

合意分割の手続きは、主に5つのSTEPがあります。

  1. 「年金分割のための情報通知書」を入手する
  2. 年金分割の按分割合を決める
  3. 年金分割請求の必要書類を準備する
  4. 年金事務所で年金分割の請求手続きを行う
  5. 「標準報酬改定通知書」を受け取る

参考:離婚時の年金分割について|日本年金機構

それでは、それぞれの手順を詳しく解説していきますね。

STEP①「年金分割のための情報通知書」を入手する

合意分割の場合、最初に情報提供の請求を行って「年金分割のための情報通知書」を手に入れる必要があります。こういう書類ですね。

年金分割のための情報通知書

この通知書には、夫婦それぞれの婚姻期間中の標準報酬総額と、按分割合の範囲が記載されています。これにより、「一体どれくらいの厚生年金記録が分割されるのか」と、「按分割合の上限と下限」がわかるということです。

この通知書を発行してもらうために、まずは年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」を提出しましょう。

見本はこちら。(2枚めまで)

年金分割のための情報提供請求書
(画像出典:離婚時に年金分割をするとき|日本年金機構

なお、情報提供の請求は離婚前と離婚後どちらでも行うことができます。

ただ、離婚後に行うと添付書類が増えることがあるので、早く手続きを進めるためにも離婚前に情報提供の請求をすることをオススメします。

また、様式はこちらからダウンロードできますが、書き方が難しいので窓口で交付してもらって直接教わりながら書くほうが安心です。

そして上記請求書を記入し終えたら、以下の書類を添付して提出して下さい。(本人確認書類朱肉を使うタイプの印鑑も持参しておくと良いでしょう)

  • 年金手帳or基礎年金番号通知書orマイナンバーがわかる書類
  • 婚姻期間を明らかにできる書類(戸籍謄本(*)or戸籍抄本or戸籍の全部事項証明書or戸籍の個人事項証明書)
  • 事実婚関係にある期間があった場合は、その事実を明らかにできる書類(住民票など)
*離婚後に情報提供の請求をする場合は、自分の戸籍謄本だけでなく相手の戸籍謄本も必要となります。

請求が完了したら、だいたい1週間ほどで情報通知書が送られてきます。ただし、共済組合の加入履歴がある場合は、そちらにも手続きが回るので1ヶ月ほど時間がかかる場合もあります。

50歳以上の人や障害年金受給者なら、その場で増える年金額が試算できる

電卓を叩く手とノート

50歳以上で、既に老齢基礎年金の受給資格(保険料の未納以外の期間が10年以上あること)を満たしている人および障害年金受給者であれば、請求手続きと同時に年金分割によって変わる年金の見込み額をその場で試算してもらうことができます。

試算を希望する場合は、情報提供請求書の所定の欄にその旨を記入して窓口へ提出して下さい。(参考元:年金分割後の年金見込額を知りたい|日本年金機構

それ以外の人は、残念ながら試算してもらうことはできません。

しかし、以下の記事にて、年金分割によって変化した年金の平均額および試算方法を紹介していますので、よかったらこちらも参考にして下さいね。

参考:「実際のところ、離婚の年金分割で増える妻の年金額は月額約3万円」

STEP②年金の按分割合を決める

 
電卓を持って首をかしげる老夫婦

情報通知書が手に入ったら、記載されている按分割合の上限と下限を確認しましょう。

ちなみに上限は50%で、下限は収入の少ない方の標準報酬総額がそれ以上減らない割合となっています。(参考:按分割合は、どのようにして定められるのですか。|日本年金機構

この範囲で、夫婦の話し合いによって按分割合が決まれば次のステップに進みましょう。もし話し合いでは決まらなければ、裁判所を通して決めることになります。

話し合いで按分割合が決まらないときは離婚調停・離婚審判で決定する

話し合いで決まらなければ、離婚調停や離婚審判を利用して按分割合を決めます。詳しい手続方法は裁判所のHPをご覧くださいね。

なお、平成28年度の司法統計によると、裁判所の判例では95%以上の割合で「按分割合は50%」という結果になっています。

按分割合の司法統計
(画像出典:家事 平成28年度 表37|裁判所)

調停などは手間も時間も費用もかかるので、「調停に持ち込んだらほぼ確実に50%になる」と説得して話し合いで解決する方が良いかもしれませんね。

STEP③年金分割請求の必要書類を準備する

封筒と電卓とペン

按分割合が決まれば、次は必要書類を揃えていきましょう。

必要書類は数が多い上に複雑です。年金事務所で手続きをするときに不備がないよう、しっかり確認しておきましょう。

<手続きに必要な書類>

  • 自分の年金手帳または基礎年金番号通知書またはマイナンバーがわかる書類
  • 夫婦それぞれの、婚姻期間を明らかにできる書類(戸籍謄本や戸籍の全部事項証明書など)
  • 請求日前1ヶ月以内に作成された、2人の生存を証明できる書類(住民票や戸籍謄本、戸籍の全部事項証明書など)
  • 事実婚関係にある期間があった場合は、その事実を明らかにできる書類(住民票など)
  • 請求人(またはその代理人)の本人確認ができる書類
  • 朱肉を使うタイプの印鑑(あると安心です)

上記に加えて、さらに”年金分割および按分割合の合意があること”を証明する書類が必要です。

書類は按分割合を話し合いによって決めたか、調停などで決めたかによって変わりますので注意して下さいね。以下、話し合いで決まった場合・調停等で決まった場合に分けて必要になる証明書類を紹介します。

話し合いで按分割合を決めた場合

話し合いで按分割合が決まった場合、下記の内いずれか1点が必要です。

  • 「年金分割をすること」および「按分割合の合意」を証明する、2人の署名入りの「年金分割合意書」(様式は窓口にあるが、自分で作成しても良い→文例文京公証役場HPより))
  • 公正証書の謄本もしくは抄録謄本
  • 公証人の認証を受けた私署証書

なお、最初の「年金分割合意書」は、必ず夫婦2人で提出する必要があります。1人で提出しても受け付けてもらえないので気をつけましょう。(ただし代理人を立てることは可能です)

一方、後の2つは公的機関による内容の保証があるため、1人でも提出することができます。

離婚調停・離婚審判で按分割合を決めた場合

裁判所による手続きで按分割合を定められた場合は、以下のいずれか1点を用意して下さい。

  • 審判の場合、審判(判決)書の謄本(or抄本)と確定証明書
  • 調停の場合、調停(和解)調書の謄本or抄本

なお、裁判所によって按分割合が決まった場合は、1人で手続きすることが可能です。

STEP④年金事務所で年金分割の請求手続きを行う

必要書類が揃ったら、あとは年金事務所の窓口で提出するだけです。

窓口で「標準報酬改定請求書」が貰えますので、記入して添付書類とともに提出しましょう。

様式の見本はこちら。(2枚めまで)

標準報酬改定請求書
(画像出典:離婚時に年金分割をするとき|日本年金機構

様式はこちらからダウンロードもできますが、難しいので教えてもらいながら書いたほうが確実です。

なお、この最後の「標準報酬改定請求書」の提出は忘れずに行って下さい。

年金分割と按分割合について合意しただけ、公正証書等に書き残しただけ、情報通知書を受け取っただけでは手続きは完了していません。

特に「裁判所で年金分割が決まったのだから手続きもされているはず」と思ってしまう人は多いので気をつけましょう。

本人が年金事務所に行けない場合は代理人でも手続き可能

按分割合を証明する書類として「年金分割合意書」を使う場合、必ず2人で窓口で手続きしなければなりません。

ただし、どうしても夫婦揃って行けないこともあるでしょう。そんな時は、代理人を立てて手続きすることができます。

代理人に依頼する場合、下記3点を追加で用意して下さい。

  • 代理人の本人確認書類
  • 委任状
  • 委任状の「ご本人(委任をする方)」欄に捺印した印鑑に係る印鑑登録証明書
注意
代理人は夫婦両方とも立てることができます。しかし、妻または夫が、相手の代理人となることはできません。

つまり、妻本人+夫の代理人や、妻の代理人+夫の代理人という組み合わせで手続きをすることはできますが、妻自身が夫の代理人も兼ねて1人で行くことはできないということです。「年金分割合意書」を提出する場合は、必ず2名で窓口に行く必要があると覚えて下さいね。

STEP⑤「標準報酬改定通知書」を受け取る

「標準報酬改定請求書」の提出後、2~3週間くらいで「標準報酬改定通知書」(年金分割で変わった年金記録のお知らせ)が、夫婦両方に届きます。

この通知が届いたら、年金分割の手続きは無事に完了したということです。お疲れ様でした!

なお、既に年金受給中の場合は、請求をした翌月分の年金額から変更されるようになります。

離婚時の年金分割に関するよくある疑問

木製のQ&Aを持つ女性

年金分割の仕組みや手続きは複雑です。

ここからはよくある疑問についてお答えしていきますので、ぜひ参考にして下さいね。

夫が国民年金のみの加入期間がある場合も分割できる?

婚姻期間中に少しでも厚生年金の加入期間があれば、その厚生年金記録は分割対象となります。

ただし婚姻期間の全期間、国民年金のみに加入者していた場合は分割を受けることはできません。年金分割制度はあくまでも"厚生年金記録の分割手続きである"ことを覚えておきましょう。

年金分割を請求するメリットとは?

専業主婦や自営業の妻、共働きだが夫より年収の低い妻が年金分割を請求すれば、将来もらえる年金額が増えます。

ただし、請求する側が会社員で相手より高収入の場合は、自分が年金記録を与える側となってしまうので逆に損になってしまいます。

また、前のセクションでも触れましたが、「婚姻期間が短い」、「どちらも会社員でお互いの収入差が少ない」場合は、増加する年金額が少なくなります。

年金分割の手間に対するリターンが小さいので、請求しないという選択も念の為視野に入れておいたほうが良いでしょう。

相手が話し合いに応じない場合は裁判してでも分割すべき?

年金分割によってどのくらい年金が増えるかによって判断することをオススメします。

調停や裁判を申し立てれば確実に年金分割ができますが、その分費用も手間も時間もかかります。「婚姻期間が短い」「夫婦の収入差が少ない」という場合は、年金分割で増える年金額も少なくなります。

調停や裁判を申し立てるコストと比較して決めたほうが良いでしょう。場合によっては、比較的手間の少ない3号分割だけを行うという判断も必要かもしれません。

合意分割で合意を得られなければ、その期間中第3号被保険者だった場合は未納扱いになる?

第3号被保険者期間中は「国民年金」は支払っていることになります。(第3号被保険者の仕組みは「漫画で分かる!国民年金の第3号被保険者制度の仕組み【記事未了】」の記事を参照)

この期間中に対して分割の合意が得られなくても、年金の未納ということにはならないので安心してください。

よって、年金分割によって夫の「厚生年金」が分割されなかったとしても、未納扱いにはなりません。

情報提供の請求は相手の合意は必要がない?

情報提供の請求だけならば、相手の合意は必要ありません。

必要書類さえ揃えば、1人で手続きすることが可能です。

参考:情報提供の請求は、当事者の二人が共同で行わなければならないのですか。|日本年金機構

別居していた期間分は年金分割できない?

年金分割の対象となるのは、結婚日から離婚日までです。

離婚日までの間に別居期間が含まれていても、年金分割の対象期間となります。

財産分与の場合は同居期間中だけが対象なので、違いに注意しましょう。

同棲していた期間分は年金分割できない?

正式に婚姻届を出していなくても、事実婚(内縁関係)であったと証明できれば、同棲期間中も年金分割の対象となります。

逆に事実婚の証明ができなければ、同棲期間分の年金分割は難しくなります。

3号分割期間しかない場合、分割の手続きをしなくても自動的に分割される?

3号分割の場合でも、請求をしなければ分割はされません。

また、年金分割には請求期限があります。原則離婚をした日の翌日から起算して2年以内に請求を行わないと、年金分割ができなくなります。

必ず早めに年金事務所へ出向いて請求手続きを行いましょう。

参考元:離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)|日本年金機構

共済年金の職域加算部分も分割できる?

共済年金の”経過的職域加算額”がある場合は、その給付分も分割の対象になります。

参考元:離婚時における厚生年金の分割|私学共済事業

妻が年金受給年齢に達するまでは、夫は減額前の年金を受け取れる?

夫だけが年金を受け取っている状況でも、年金額は減額改定された金額となります。

年金分割により分割されるのは、年金額の計算元となる加入記録です。

実際に支給される年金額の一部を分配するわけではないので、妻が年金を受け取っていなくても減額改定された年金額となります。

相手が年金分割を請求したか確認する方法はある?

情報提供の請求を行った場合、離婚後であれば双方へ「年金分割のための情報通知書」が送付されます。

よって、離婚後であればこの通知の送付によって、相手が年金分割の請求を行おうとしていることがわかります。

逆に離婚前である場合、「情報通知書」は妻だけに送られてきます。(したがって、夫にバレずに情報だけ知りたい場合は離婚前に情報提供の請求を行いましょう。)

また3号分割の場合は妻1人で手続きができるので、これらの場合で夫が請求を確認できるのは、手続きが完了した後に送られてくる「標準報酬改定通知書」を受け取ったときということになります。

年金分割後再婚したら年金はどうなる?

年金分割によって改定された年金記録はそのまま再婚後も引き継がれます。

なお、年金分割をした側(主に元夫)が死亡した場合、再婚相手が受け取れる遺族厚生年金は、年金分割前に比べて減額します。

逆に年金分割を受けた側(主に元妻)が死亡した場合、再婚相手は遺族厚生年金を受け取れるようになる、またはもらえる遺族厚生年金額が年金分割を前と比べて増額します。

年金分割後にどちらかが死亡したら年金額は元に戻るの?

合意分割だろうが3号分割だろうが、一度分割した年金記録は元には戻りません。

言い方は悪いですが、分割する側から考えると元配偶者が亡くなったとしても、その分が自分の年金記録として戻ってくるわけではないので分割損ということになります。

人間がいつ死ぬかは分からないので、この制度は仕方ないのかもしれませんけどね。

離婚の年金分割を拒否できるケースはあるのか?

年金分割制度は、法律によって定められた制度ですから、法律に則って請求が行われる限り、拒否をすることは出来ません。

生活保護を受ける場合必ず年金分割を請求しなければならない?

生活保護は、他に収入を得る手段が一切ない人の最後のセーフティーネットという位置づけです。

年金分割という収入を得られる手段を敢えて行使しないというのは、生活保護の支給停止の事由として判断されることもあり得ます。

ですので年金分割を請求しておくことをオススメしますが、まずは担当のケースワーカーに相談したほうが良いでしょう。

まとめ

電卓と離婚届

年金分割は婚姻期間中の夫婦の年金記録を分け合えるので、特に年金が少なくなりがちな専業主婦にはとても心強い制度です。

ただし、仕組みや手続きが複雑な分、理解不足で請求を諦めてしまったり、いつの間にか請求期限の2年が過ぎてしまったりすることも多いです。

また、途中段階の「情報提供通知書の請求」や「按分割合の決定」で手続きが終わったような気持ちになり、手続きが未完了のままにしてしまうケースも少なくありません。

必ず「標準報酬改定請求書の提出」まで完了させるよう気をつけて下さいね。

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