「時短勤務でも、社会保険に加入できるの?」「最近条件が変わったよね?今の条件って結局どんな感じ・・・?」
疑問に思うのも当然です。以前、短時間労働者は社会保険の加入対象外でした。
しかし徐々に加入対象が拡大され、一定の条件を満たす短時間労働者は社会保険に加入できるようになったのです。(※平成28年、29年に短時間労働者が社会保険に加入する条件が改正されました。)
どう拡大されたのか、気になりますよね。とはいえ拡大内容を正しく理解し、条件に当てはまるか確認するのって結構ムズかしいと思います。
そこで今回の記事では、「短時間労働者が社会保険に加入する条件」について徹底的に解説していきますよ!
ただし、まずは「社会保険に加入する原則的条件」を確認する必要があります。原則に当てはまるか確認したあとに短時間労働者の条件を見ていきましょう。
社会保険に加入できる「原則的条件」とは~「4分の3要件」を満たす短時間就労者も原則加入!
社会保険の被保険者になる原則的な条件は以下のとおりです。(※健康保険の加入条件は、厚生年金保険と極めて等しいため割愛します。)
- ①70歳未満の常時使用される労働者
- ②パートやアルバイト等①以外の労働者でも1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上である方(いわゆる4分の3要件。4分の3要件を満たす社員のことを「短時間就労者」と呼びます。)
上記①か②のいずれかに該当すれば、原則として社会保険に加入する事になりますよ。
社会保険の被保険者となる基準に雇用形態は含まれておらず、あくまでも「所定労働時間と所定労働日数」で判断されます。従って、パートでもアルバイトでも契約社員でも条件さえ満たせば、原則的に社会保険の被保険者になりますよ!
とはいえパートやアルバイトの場合、勤務状況は月によって変動があると思います。このとき、基本的には就業規則や雇用契約書を見て上記条件に該当しているか否か判断することになりますよ(*)。
(参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用が拡大Q&A集問2の2の解答)
短時間労働者が社会保険に加入する5つの条件
前述した4分の3条件に当てはまらない人は、原則的には社会保険の被保険者ではありません。このような労働者を「短時間労働者」といいます。
しかし平成28年の「短時間労働者に対する社会保険の適用拡大」により、以下5つの条件すべてを満たす場合は、短時間労働者でも社会保険に加入できるようになりました。
- ①週の所定労働時間が20時間以上あること
- ②雇用期間が1年以上見込まれること
- ③賃金の月額が8.8万円以上であること
- ④学生でないこと
- ⑤以下いずれかを満たしていること
a.常時501人以上の被保険者を雇っている企業に勤めていること
b.被保険者が500人以下の企業に勤めている場合、労使で短時間労働者の社会保険加入の同意が得られていること
c.国・地方公共団体の構成員(国・地方公共団体には人数要件なし)
(参考:適用事業所と被保険者|日本年金機構)
ちなみにこの適用拡大によって、約40万人が社会保険の適用対象になったんですよ。
(画像出典:働き方の多様化に伴う被保険者制度の課題|厚生労働省 P5 被用者保険の適用状況の見取り図より)
ところで文面上では5つの条件を理解しても「こんなときは当てはまるのかな?」と思うことってありますよね。
そこで「短時間労働者が社会保険に入る条件」にまつわる疑問をQ&A形式でいくつか取り上げました。この機会に正しく理解しておいてくださいね!
短時間労働者の社会保険に関するQ&A
月額賃金88,000円に含まれないものとして、以下4つがあげられます。
・臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
・時間外労働に対して支払われる賃金(休日・深夜労働割増賃金)
・最低賃金において参入しないことを定める賃金(精皆勤手当・通勤手当・家族手当)
(参考:短時間労働者に対する健康保険 ・厚生年金保険の適用拡大 Q&A集 |日本年金機構 P10 問26の解答より)
ただし、現在被保険者である者が、常態的に88,000円を下回る状況が続く場合は、社会保険の資格を喪失します。
(参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に係る事務の取扱いについて〔厚生年金保険法〕(◆平成28年05月13日年管管発第513001号保保発第513001号) 第2 (4)学生でないこと)
(参考:短時間労働者に対する健康保険 ・厚生年金保険の適用拡大 Q&A集 |日本年金機構 P9 問22の解答より)
以上、短時間労働者の社会保険加入に関してよくある疑問をまとめてみました。以下のリンクに様々なQAが示されていますので、当記事で紹介したQAに自分がお悩みのことが無かった場合、下記のリンク先も参照してみて下さい。
⇒短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用が拡大Q&A集|厚生労働省
⇒労使合意に基づく適用拡大 Q&A集|厚生労働省
社会保険に加入するメリット
社会保険は高いし損!と思っていませんか?
確かに保険料は高いですよね。しかし、その分メリットも大きいんですよ。以下、社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入するメリットを5つ取り上げました。
- 会社が保険料の半額を負担してくれる
- 老後に貰える年金が増える
- 遺族年金の「遺族の幅」が広くなる
- 障害年金の受け取り枠が広くなる
- 傷病手当金と出産手当金が貰える
社会保険に加入することで国民年金・国民健康保険に加入していた場合と比べて、全体的に手厚い保障が受けられるようになります。
老齢年金で話をすると、たとえば標準報酬月額88,000円の方であれば月額負担額8,052円で将来的に国民年金だけでなく厚生年金も受給できるようになります。国民年金単独の保険料が2019年度で16,410円ですから、かなりお得であることが分かりますね。
[getpost id=”13261″ target=”_blank”]その他、社会保険に加入するメリットは下記記事で詳しく解説しています。そちらも参照して下さい。
⇒社会保険(健康保険・厚生年金)に加入するメリットは何か?社労士が解説!【記事未了】
社会保険加入のデメリットは一時的に手取りが減ること!特に元々扶養に入っている人は要注意
では、社会保険に加入するデメリットはなんでしょうか?
この点、一番に上げられるのは「手取額」が減ってしまうことです。
社会保険に加入することで、その分保障は手厚くなりますから結果としてはお得になることが多いですが、やはり今まで満額受け取っていたお給料から保険料が引かれるのはデメリットと言えるでしょう。
特にもともと扶養内で働いていた方であれば、なおさらですよね。この点、下記記事で損得計算も含めて解説しています。扶養内で働くべきか・扶養を外れて働くべきか悩んでいる人は参考にして下さいね。
参考:扶養内のパート主婦、社会保険には加入すべきか?106万円、130万円の壁を解説!【記事未了】
最後に~短時間労働者の適用対象は今後も広がる可能性大!
以上、短時間労働者が社会保険に加入する条件を見てきました。直近で2回の改正が行われ社会保険加入条件の適用拡大が続いています。
さらに言えば、近々さらに社会保険の対象者が拡大する可能性があります。
適用拡大に向けて、条件の改正が検討されているのは以下の2点です。
・従業員数による縛りを緩和、または解除
厚生労働省の発表では、令和元年9月より本格的に議論を開始。令和2年には法案提出を目標としています。この場合、施行は最短で令和3年です。
社会保険に加入するメリットは十分あります。しかし、もし社会保険の適用対象外で働きたい場合は今後の適用拡大に注意してくださいね。
参考:社会保険の適用拡大の歴史を時系列でまとめてみた!適用を拡大する理由も!【記事未了】