普段あまり使わないので、どこに行ったかわからなくなりがちな年金手帳。
「会社に預けたままだったっけ?それとも自分が持ってたんだっけ?」
と思ったことがある人も多いのではないのでしょうか?
また私自身、転職前の会社では年金手帳を預かってもらっていたのに、転職後の会社ではすぐに返却されて不思議に思ったこともあります。
年金手帳は本来誰が保管すべきものなのでしょうか?何か法的な決まりなどはあるのでしょうか?
結論から言いますと、厚生年金保険法施行規則第十六条で「事業主は、提出された年金手帳を確認した後、被保険者に返付しなければならない」と記載されているので、本来的には年金手帳は個人の手元にあるべきものと言えます。
しかし、実際には会社が年金手帳を保管していることも多いです。何か理由がありそうですよね。
そこで今回は、会社が年金手帳を保管する理由をメリット・デメリットを踏まえて紹介したいと思います。また、あまり知られていない年金手帳の活用法も紹介しているので、是非最後までお付き合いください!
年金手帳の概要
年金手帳とは公的年金の加入者に対して原則一人につき一冊交付される”基礎年金番号”が記載された手帳(*)のことです。就職・転職するときや、年金を受け取るとき、自分の年金記録の確認をするときなどに必要となる大事なものです。
年金手帳や基礎年金番号の詳細については、それぞれ下記記事で詳しくまとめているので詳細を知りたい方はそちらも参照してください!
参照:年金手帳とは?重要だけど、実は今後は必要ではなくなるかも!?
参照:基礎年金番号とは?意味や桁数、マイナンバーとの違いなど紹介
では、次より本題の“誰が年金手帳を保管するのか”について見ていきます。
年金手帳は会社に提出する必要がある場合がほとんど!でも保管するかどうかは会社次第
新しい会社に入社したら、ほとんどの場合で年金手帳の提出を求められます。これは、新入社員の社会保険加入手続きに基礎年金番号が必要となるためです。
会社側は、基礎年金番号の確認手段として年金手帳の提出を求めてくるわけですね。
また、提出した年金手帳は、そのまま会社が預かる場合もあれば、基礎年金番号を確認後すぐに返却される場合もあります。
冒頭でもお伝えしましたが、年金手帳の保管は本来的には個人がやるべきものです。しかし、会社の方針によって会社で保管するかどうかが決まってくることが多いです。
逆に、会社には年金手帳を預かる義務や責任があるわけでもないので、どうしても自分で管理したい場合は、その旨を申し出れば返却してもらえるはずです。(会社の規則で決まっている場合は無理かもしれませんが・・・)
なぜ会社で保管することが多いのか?
年金手帳は本来個人が管理するものだが、会社の方針によって会社が保管するかどうか決まるというのが現状です。
しかし、そもそも個人の所有物をわざわざ会社が預かるのは、管理の負担が増えるだけであまり合理的ではないように思えます。
実際、会社で年金手帳を保管しているところも多くありますよね。なぜ、わざわざ年金手帳を会社で保管するのでしょうか?
それは、会社で保管することにより以下の2つのメリットがあるからです。
- 紛失のリスクを減らせる
- 住所・氏名変更などの手続きをスムーズに行える
それでは、それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
会社保管のメリット①年金手帳の紛失のリスクを減らせる
もし個人で年金手帳を保管していると、会社保管に比べて紛失のリスクは高くなります。年金手帳は就職や退職時などの特定の機会にしか使わないので、いつの間にか紛失してしまうことも多いですからね。
もし従業員が年金手帳を紛失してしまった場合、会社が年金手帳の再発行手続を代行してあげる事も多いです(原則的には本人が再交付手続きをすることになっているのですが、年金事務所からは会社経由でお願いしますと言われる事が多い)。
従業員を何千・何万人と抱える大企業は特に、就職・退職の度に大勢から「年金手帳をなくしました」と言われたら、その再発行の作業だけでも大変なものです。
そのリスクを減らすため、年金手帳を会社で保管している場合が多いわけです。
会社保管のメリット②住所・氏名変更などの手続きをスムーズに行える
会社に勤めている間に、引っ越しや結婚で住所や氏名が変わることもあるでしょう。そのような場合、会社は従業員の代わりに、住所や氏名の変更手続きを代行する必要があります。
ここで、もし年金手帳を個人が保管していれば、まず会社は従業員に年金手帳を持ってくるよう指示しなければなりません。もし紛失してしまっている場合、再発行の手続きも必要となってきます。
その点、会社が年金手帳を保管していれば、ただ従業員から変更後の住所や氏名を伝えてもらうだけで良いので、上記のような手間や時間のロスなしに手続きを進めることができます。
メリットばかりじゃない!年金手帳を会社で保管するデメリット
年金手帳を会社で保管する理由として、紛失のリスクを減らしたり手続がスムーズにできるメリットがあるとお伝えしました。
しかし、メリットばかりではありません。会社で年金手帳を保管するデメリットも存在します。
・退職時に年金手帳の返却を忘れられることもある
以下、どういうことなのか詳しく見てみましょう。
会社保管のデメリット①会社が紛失してしまうリスクがある
年金手帳を個人で保管するよりも紛失する可能性はずっと低いとはいえ、会社も100%紛失しないわけではありません。
個人が自分の年金手帳を紛失しても自己責任で済ませられますが、会社が従業員の貴重品を紛失してしまったら大問題です。個人情報の漏えいにも繋がりかねません。
そういうリスクもあると認識しておきましょうね。
会社保管のデメリット②退職時に年金手帳の返却を忘れられることもある
会社が年金手帳を保管していて、その従業員が退職する場合、年金手帳は個人のものなので当然退職時に返却されます。
しかし、稀に退職時に年金手帳の返却を忘れられてしまうケースがあるのです。
退職後、厚生年金から国民年金に切り替えるときには年金手帳が必要になりますし、転職するなら当然ふたたび年金手帳の提出を求められます。
年金手帳が必要になった時にはじめて「年金手帳を返してもらってない!」と気づいても、既に退職してしまっています。前の職場にまた連絡をするのはちょっと気後れするでしょうし、郵送してもらっても時間がかかってしまいます。
もちろん退職時にきっちり返却してくれることの方が多いのですが、このようなリスクもないわけではないと思った方が良いでしょう。
年金手帳の個人保管のメリットと知られざる活用方法
年金手帳を会社で保管するメリットとデメリットはおわかりいただけたかと思います。それでは逆に、個人が保管することによるメリットはどんなものがあると思いますか?
まず、個人で年金手帳を保管するメリットは、会社で保管するデメリットの逆で、「個人情報を自分で管理できる」「退職時に返却を忘れられるリスクがない」ということが挙げられます。
またそれ以外にも、個人保管ならではの年金手帳の活用法があるのです。それが以下の2つ。
・身分証明書として使える
・公的施設の割引が受けられた
それぞれ詳しく見てみましょう。
個人保管のメリット①身分証明書として使える
年金手帳は、多くの場合身分証明書の一つとして認められています。かつては日本国政府である社会保険庁(現在は日本年金機構)から発行されていたので、公的な身分証明書としての性格を持っているのです。
顔写真が付いていないので、年金手帳一つだけで身分証明をすることはできませんが、健康保険証や学生証など顔写真のない他の身分証明書と併用することで身分を証明することができます。
例えば郵便物の本人限定受取の本人確認でも、年金手帳を身分証明書として使えるようになっています。
このように身分証明書として認められることも多いので、運転免許証やパスポートをお持ちでない方はぜひ身分証明書の一つとして活用してみてくださいね。
個人保管のメリット②公的施設の割引が受けられた【現在は使えません!】
かつては年金手帳の提示によって割引を受けられる公的施設がありました。「グリーンピア」、「国民年金の宿」、「ウェルサンピア・ウェルシティ」などが代表的な施設です。
しかし、これらの公的施設は年金保険料を使って運営されていたのですが、保険料の無駄遣いなどの指摘を受け、現在は全て廃止または民間へ売却されてしまいました。
現在は年金手帳による施設割引の恩恵は受けられませんが、かつては個人で保管することでこうしたメリットがあったのですね。
【まとめ】年金手帳が会社保管されるかは会社によって違う
誰が年金手帳を保管するかは、最終的には会社の方針次第ということが分かりましたね。
傾向としては、大企業ほど年金の手続きを行う頻度が高いため、紛失しないよう会社で保管することが多いようです。
逆に中小企業は、年金手帳の再発行などの手間よりも会社で保管するリスクの方が大きいので返却する傾向にあると言えます。
なお、2018年以降は年金関連の手続きのほとんど全てをマイナンバーにより行う事が可能となっています(参考:日本年金機構におけるマイナンバーへの対応|日本年金機構)。従って、会社から年金手帳の提出を求められることは無くなってきているかもしれませんね。