厚生年金保険の「任意単独被保険者」とは誰のこと?

タイトルと書類を抱えるスーツの女性

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現在、厚生年金の任意加入被保険者には2種類あります。

任意単独被保険者と、高齢任意加入被保険者です。なんだか名前も似ているので、「一体何が違うの?」と混乱してしまいますね。

今回は、任意単独被保険者について詳しく解説していこうと思います。

混同しやすい高齢任意加入被保険者との違いもわかりやすく説明していますので、違いをしっかり整理していってくださいね。

目次

厚生年金の任意単独被保険者とは?

顎に手を当てるスーツの男性

任意単独被保険者とは、“勤め先が厚生年金の適用事業所(*)では無いので本来は厚生年金に入れないけれど、任意で厚生年金の被保険者となった70歳未満の会社員”を指します。

* 厚生年金の適用事業所か否かについての詳細は後述のセクションを参照してください。

つまり、任意単独被保険者制度は「国民年金だけだと不安だから、なんとか厚生年金に加入したい!」という人にとっては嬉しい制度とも言えます。

資格取得の条件と資格取得時期

任意単独被保険者になるためには、以下のすべての条件を満たす必要があります(参考:厚生年金保険法 第10条

  • 70歳未満であること
  • 適用事業所以外の事業所に使用されていること
  • 厚生年金の被保険者の適用除外の要件厚生年金保険法 第12条に該当しないこと
  • 事業主の同意があること

そして、任意加入被保険者は厚生労働大臣の認可があった日に被保険者の資格を取得します。厚生年金保険法 第13条 2)

ポイント

任意単独被保険者となるには事業主の同意が必ず必要です。

なぜなら、任意単独被保険者を使用する事業主には、任意単独被保険者に関わる手続き(資格取得・喪失の届け出、報酬月額・賞与額の届け出など)をする義務厚生年金保険法 第27条,第98条 1)と、その任意単独被保険者の保険料を半額負担し、納付を行う義務厚生年金保険法 第82条 1,2)が発生するからです。

「保険料は全額自己負担して、手続きも自分でしたら事業主の同意なしで任意単独被保険者になれないの?」と思うかもしれませんが、残念ながら現状ではそのような措置は取られていないのです。

資格喪失の条件、資格喪失時期

任意単独被保険者は、以下のいずれかに該当した場合、被保険者の資格を喪失します。(参考元:厚生年金保険法 第14条

  • 死亡したとき
  • 退職したとき
  • 自ら資格喪失を申し出て、厚生労働大臣の認可があったとき*
  • 厚生年金の被保険者の適用除外の要件厚生年金保険法 第12条に該当したとき
  • 70歳になったとき
*資格喪失の場合は、資格取得の場合と異なり事業主の同意は必要ありません。厚生年金保険法 第11条

なお、資格喪失の時期は、上記の条件に該当した日の翌日です。

ただし、最後の「70歳になったとき」と、該当した日に更に別の被保険者の資格を取得した場合は、該当したその日に資格を喪失します。

高齢任意加入被保険者との違いは?

デスクの前で考え込むサラリーマン

厚生年金の任意加入制度には、もう一つ「高齢任意加入被保険者」というものもあります。名前もよく似ているので、任意単独被保険者と間違えやすいので注意しましょう。

まず、高齢任意加入被保険者とは、老齢年金の受給権を満たすために任意で厚生年金に加入する70歳以上の会社員(または公務員)のことを指します。

詳しくはこちらの記事をご覧下さいね。

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両者の違いをまとめると、以下のようになります。

<任意単独被保険者になるための要件>

  • 70歳未満
  • 勤め先が適用事業所以外の事業所
  • 事業主の同意が必須
  • 老齢年金の受給権の有無は問わない(受給権があっても、さらに年金額を増やす目的で加入できる)

<高齢任意加入被保険者になるための要件>

  • 70歳以上
  • 勤め先の種類は問わない
  • 適用事業所であれば事業主の同意は不要
  • 老齢年金の受給権がない人限定(受給権を満たすことだけが目的)

紛らわしいですが、違いをしっかりと整理しておきましょうね。

【参考】事業所が小規模の場合は任意単独被保険者になれる?

お店の前で寄り添う夫婦

任意単独被保険者に関してよくあるのが、「うちは個人でやっている従業員数も数人の小さな事業所だけど、任意単独被保険者になれるの?」というお悩みです。

まず、事業所が株式会社や有限会社などの法人となっている場合、従業員は任意単独被保険者になれません。

法人の場合は厚生年金の”強制適用事業所”となるので、従業員は(適用除外に該当する者を除き)厚生年金の当然被保険者となります。

法人でない場合も、適用事業所の要件厚生年金保険法 第6条 1)を満たしていれば強制適用事業所となるので、まずは事業所が適用事業所であるかどうかを確認しておきましょう。

もし適用事業所に該当しない場合、従業員は条件を満たせば任意単独被保険者になり得ます。

ただし、被保険者の要件は「適用事業所以外の事業所に使用される七十歳未満の者厚生年金保険法 第10条」です。事業主は”使用される者”ではないので任意単独被保険者にはなれないことに注意しましょう。

まとめ

任意単独被保険者となれば、勤め先が適用事業所でなくとも厚生年金に加入できるようになります。

最後に、混同しやすい”高齢任意加入被保険者”との違いをまとめておきますね。

任意単独被保険者「勤め先が適用事業所じゃないけど、年金額を増やすために厚生年金に入っておきたい」という人が加入

高齢任意加入被保険者「70歳を過ぎてしまったけど、老齢年金の受給権を満たすために保険料を払いたい」という人が加入

厚生年金に加入すると、将来の年金額が増えるだけでなく、遺族厚生年金や障害厚生年金などいざという時の保障も厚くなるので、できれば入っておきたいと思う人もいると思います。

ただし、事業主は保険料を半分負担し、納付等の事務手続きの負担も負わなければならなくなります。

事業主にとっては単純に負担が増えるだけなので、よほど親しい間柄か親切な事業主でない限りは、事業主の同意を得るのはなかなか難しいのが現実でしょう。

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