「今の日本は3組に1組が離婚している!」というような話を聞いたことはありませんか?
確かに、芸能人の離婚報道なども頻繁に目にするので、離婚率が高い国のように思えるかもしれません。
しかし、実はこの「3組に1組」という結果は数字のトリックだということをご存知でしたか?
多くの人が想像する「既婚者の何組に1組が離婚するのか」で考えた離婚率は「1年間で200組に1組(5‰ *)」です。(すぐに計算の仕組みが知りたい方はこちら)
一口に「離婚率」と言っても、計算の仕方や使うデータによって結果が大きく変わってきます。
今回は日本の離婚率について、様々な角度から検証してみたいと思います。過去からの離婚率の推移や都道府県別、国別、年齢別、婚姻期間別の比較を見て、日本の離婚率は実際どうなっているのかを調べてみましょう。
本当に3組に1組も離婚している?数字のトリックに注意
よく目にする、この「3組に1組」という数字はどこから来ているのでしょうか。
このような結果になるのは、1年間の婚姻件数に対する1年間の離婚件数で計算しているからです。
例えば2017年(平成29年)の統計では、
1年間の婚姻件数=60万件
1年間の離婚件数=21万件
となり、「3組に1組が離婚」という結果になります。(参考:平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況 第1表 人口動態総覧|厚生労働省)
しかし、よく考えてみるとおかしいですよね。
今は少子高齢化の上に晩婚化も進んでいるので、1年間の婚姻件数は減少しています。
(画像出典:平成30年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)第1部 少子化対策の現状 第1章 少子化をめぐる現状 3婚姻・出産の状況|内閣府)
それに対し、離婚件数は過去何十年間で結婚した夫婦全員の離婚が対象です。
婚姻率が高かった時代に結婚した世代が、婚姻率が低くなった時代に離婚したら、離婚率が高くなるのは当然ですよね。
このように、比較する対象が対等とは言えないので、この「3組に1組」という数字は私達が通常考える離婚率とは異なるものということになります。
厚生労働省による離婚率は1.7‰(%ではなく千分率のパーミル)
「3組に1組」の計算方法は、メディアなどが独自に使っているものです。
離婚率の計算は様々な方法で行なえますが、厚生労働省が公式に採用している計算方法から導かれた離婚率は以下のとおりです。
この1年間での人口1000人に対する離婚件数を、「普通離婚率」と呼びます。(1000人あたりなので、%ではなく‰(パーミル)で表します)
ここからは、この「普通離婚率」の計算方法をもとにして、過去からの離婚率の推移や都道府県別、国別の離婚率の比較を行っていきます。
どういう計算に基づいた結果であるかは重要なので、ぜひ注意して見ていってくださいね。
日本の離婚率は減少している?過去からの普通離婚率の推移
「3組に1組が離婚」とよく言われるように、「日本の離婚率は上昇している」というイメージが世間で定着しているように思えます。
しかし、実際のところ本当に離婚率は上がっているのでしょうか。婚姻率とも比較しながら、1970年からの約50年間の推移で確認してみましょう。
参考元:平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況 第2表-2 人口動態総覧(率)の年次推移|厚生労働省
※計算方法:1年間での人口1000人に対する離婚件数
この表からわかるように、ピークだった2000年~2005年以降は、現在に至るまで普通離婚率はほぼ右肩下がりに減少しています。
そして現在は婚姻率が下がっているので夫婦の数自体が少なくなっています。人口あたりの離婚率もそれに伴って下がっていくのはある程度自然なことだと言えるでしょう。
離婚率が高い都道府県ランキング
ところで、都道府県ごとにも離婚率に差があるのをご存知でしょうか。
実は、離婚率が最も高い都道府県と最も低い都道府県とでは、約2倍も離婚率に差があります。
まずは日本全体の離婚率の分布から見てみましょう。
参考元:平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況 人口動態総覧(率),都道府県(21大都市再掲)別 |厚生労働省
※計算方法:1年間での人口1000人に対する離婚件数
東北地方は離婚率が低く、九州・沖縄地方は離婚率が高い傾向があることがわかりますね。
次に、離婚率が高い都道府県ランキングも掲載しておきます。
順位 | 都道府県 | 離婚率(‰) |
---|---|---|
1 | 沖 縄 | 2.44 |
2 | 宮 崎 | 1.97 |
3 | 大 阪 | 1.96 |
4 | 北 海 道 | 1.92 |
5 | 福 岡 | 1.9 |
6 | 和 歌 山 | 1.83 |
7 | 高 知 | 1.79 |
8 | 香 川 | 1.76 |
9 | 東 京 | 1.74 |
10 | 岡 山 | 1.72 |
11 | 福 島 | 1.71 |
12 | 神 奈 川 | 1.71 |
13 | 愛 媛 | 1.71 |
14 | 鹿 児 島 | 1.71 |
15 | 埼 玉 | 1.7 |
16 | 愛 知 | 1.7 |
17 | 大 分 | 1.7 |
18 | 千 葉 | 1.69 |
19 | 山 梨 | 1.69 |
20 | 兵 庫 | 1.68 |
21 | 栃 木 | 1.67 |
22 | 静 岡 | 1.66 |
23 | 茨 城 | 1.65 |
24 | 群 馬 | 1.65 |
25 | 広 島 | 1.65 |
26 | 青 森 | 1.64 |
27 | 熊 本 | 1.63 |
28 | 宮 城 | 1.62 |
29 | 京 都 | 1.61 |
30 | 山 口 | 1.6 |
31 | 滋 賀 | 1.59 |
32 | 鳥 取 | 1.59 |
33 | 三 重 | 1.58 |
34 | 徳 島 | 1.58 |
35 | 長 野 | 1.57 |
36 | 佐 賀 | 1.57 |
37 | 長 崎 | 1.55 |
38 | 奈 良 | 1.54 |
39 | 島 根 | 1.53 |
40 | 岐 阜 | 1.5 |
41 | 岩 手 | 1.49 |
42 | 福 井 | 1.41 |
43 | 秋 田 | 1.38 |
44 | 石 川 | 1.36 |
45 | 富 山 | 1.34 |
46 | 山 形 | 1.33 |
47 | 新 潟 | 1.29 |
沖縄だけが突出して離婚率が高いことに気が付きましたか?
沖縄の離婚率が高い理由は、平均所得が最も低いので、生活苦により離婚することが多いためだと言われています。
離婚率が高い世界の国ランキング
次は世界の離婚率について。日本は世界的に見て離婚率が高いのでしょうか?
以下の図は統計局によるデータに基づいて作成しました。地域によって離婚率に傾向があることがわかります。
参考元:世界の統計2018 P51 第2章 人口 2-17 婚姻率・離婚率|総務省統計局
※計算方法:1年間での人口1000人に対する離婚件数
また、主要な国々の離婚率を高い順に並べると、以下のようになります。(データのある国のみ)
国名 | 離婚率(‰) |
---|---|
ロシア | 4.7 |
ベラルーシ | 3.5 |
ウクライナ | 3 |
デンマーク | 3 |
キューバ | 2.8 |
アメリカ合衆国 | 2.5 |
スウェーデン | 2.5 |
チェコ | 2.5 |
フィンランド | 2.5 |
ベルギー | 2.2 |
ポルトガル | 2.2 |
韓国 | 2.1 |
スペイン | 2.1 |
エジプト | 2.1 |
オランダ | 2 |
ドイツ | 2 |
ハンガリー | 2 |
オーストラリア | 2 |
イギリス | 1.9 |
オーストリア | 1.9 |
ノルウェー | 1.9 |
フランス | 1.9 |
シンガポール | 1.8 |
中国 | 1.8 |
日本 | 1.7 |
イスラエル | 1.7 |
トルコ | 1.7 |
ポーランド | 1.7 |
ニュージーランド | 1.7 |
イタリア | 1.4 |
なお、ロシアの離婚率が高い理由は、「アルコール依存症の人が多い」「所得が低い」「離婚・再婚に対する精神的な抵抗が小さく、また制度的にも離婚が簡単にできる」ことが挙げられます。
離婚率はそれぞれの国の制度や結婚観、経済状況、国民性などによっても変わってくるようです。たとえば、日本は事実婚比率が低いので、ヨーロッパなどと比べると(実際の)離婚率が低く出る可能性は否めません。
年齢別の離婚率は「男性30~44歳」「女性30~39歳」が最多
今度は、年齢別に見てどの層の離婚の割合が高いのか検証してみましょう。
1年間に離婚した夫婦全体に対する年齢別の割合の推移は以下のようになっています。先程までと違って、母集団が人口ではなく1年間の離婚件数全体となっているので注意しましょう。
(画像出典:我が国の人口動態平成30年 P35 夫・妻の年齢階級別にみた離婚件数構成割合の年次推移−昭和25〜平成28年−|厚生労働省)
※計算方法:1年間での全離婚件数あたりの割合
2016年(平成28年)では、男性は「30~34歳」「35~39歳」「40~44歳」、女性は「30~34歳」「35~39歳」が全体の中で最も割合が高くなっています。
昔に比べると、中高齢世代の離婚の割合がかなり大きくなっているのがわかりますね。
ちなみに、2016年度における年齢別の離婚件数の実数は以下のとおりです。(単位:件数)
年齢 | 男 | 女 |
---|---|---|
19歳以下 | 515 | 1,149 |
20~24歳 | 7,348 | 11,316 |
25~29歳 | 17,219 | 22,847 |
30~34歳 | 25,207 | 28,444 |
35~39歳 | 26,329 | 26,614 |
40~44歳 | 25,509 | 24,807 |
45~49歳 | 19,387 | 17,761 |
50~54歳 | 12,906 | 9,934 |
55~59歳 | 8,212 | 5,173 |
60~64歳 | 5,373 | 3,146 |
65~69歳 | 4,371 | 2,628 |
70~74歳 | 1,880 | 1,158 |
75~79歳 | 1,019 | 545 |
80歳以上 | 557 | 310 |
合計 | 155,832 | 155,832 |
注:なお、上記データは各届出年に同居をやめて届出をしたものの数字です。別居しているがまだ離婚届は出していない方々は含まれていないと想定されるので各年度の離婚件数とは一致していません。
婚姻期間別の離婚率1位は「5年未満」、2位は「5~10年」
年齢別の離婚率と併せて、婚姻期間(同居期間)別に離婚の割合を見てみましょう。
1年間の離婚件数と、1年間の離婚件数全体対する同居期間別の割合の推移は以下のようになっています。(注:ここでも母集団は人口ではなく1年間での全離婚件数です)
(画像出典:我が国の人口動態平成30年 P34 同居期間別にみた離婚件数の年次推移−昭和22〜平成28年−|厚生労働省)
※計算方法:1年間での全離婚件数あたりの割合
1947年以降変わらず最も多いのは「5年未満」、次いで多いのが「5年以上10年未満」の離婚です。
先のセクションの年齢別離婚率で、「男性35~44歳」「女性30~39歳」が最も多いことと併せて考えると、男性なら20代後半~30代前半、女性なら20代前半~20代後半で結婚し、10年未満で離婚するケースが多いと推測できるでしょう。
そして、もう一つのポイントは、婚姻期間が20年以上の夫婦の離婚がかなり多くなってきていることです。
一般的に婚姻期間20年以上での離婚を「熟年離婚」と言いますが、この熟年離婚が40年ほどで特に急速に増加しています。
ちなみに2016年度の同居期間別離婚件数の実数は以下のとおりです。(単位:件数)
同居期間 | 件数 |
---|---|
5年未満 | 68,011 |
5~10年 | 44,391 |
10~15年 | 29,531 |
15~20年 | 22,986 |
20~25年 | 16,857 |
25~30年 | 9,744 |
30~35年 | 5,041 |
35年以上 | 5,959 |
不詳 | 14,278 |
合計 | 216,798 |
平均同居期間 | 11.3年 |
一番現実的な数字はコレ!1年間で離婚する夫婦は「200組に1組(割合にして0.5%)」
さて、ここまでは厚生労働省が採用する「普通離婚率(1年間における人口1000人あたりの離婚件数)」の計算方法に基づいて離婚率を検証してきました。(年齢別・婚姻期間別の離婚率は除く)
しかし、この計算方法でわかるのは、赤ちゃんから配偶者に先立たれたお年寄りまで、未婚の人を含めたすべての人口に対する離婚の割合です。
多くの人が知りたい「何組の夫婦に1組が離婚しているのか」とはまた違う数字なのです。
そこで、ここからはより私達の想像に近い離婚率を掘り下げていきたいと思います。
有配偶離婚率とは?
「何組の夫婦に1組が離婚しているのか」を知るには、「有配偶離婚率」を用いるのが適切です。
「有配偶離婚率」とは、1年間において既婚者のうちの何人が離婚したかを表す指標です。計算式は以下のとおりです。
有配偶者離婚率の過去からの推移
それでは、有配偶離婚率を用いて改めて日本の離婚率の推移を見ていこうと思います。
参考元:人口統計資料集(2018) Ⅵ.結婚・離婚・配偶関係別人口 表6-11 性,年齢(5歳階級)別有配偶者に対する離婚率:1930~2015年|国立社会保障・人口問題研究所
※計算方法:その年の有配偶人口(男女別)あたりの1年間の離婚件数
※日本は一夫一妻制なので、理論上は有配偶人口・離婚件数および有配偶離婚率は男女で同じとなります。
最も離婚率の高い2000年以降、有配偶離婚率は下がり続け、最新の2015年の統計では5‰(パーセントでいうと0.5%)となっています。
つまり、1年間で200組に1組が離婚しているということになります。
よく言われている「3組に1組」とはずいぶんかけ離れた結果になりましたね。
ただし、このデータも注意すべき点があります。それは0.5%という数字はあくまでも「単年度の数字」であること。
みなさんが知りたい「婚姻期間別の離婚率(ex.10年や20年で離婚する確率)」を知りたかったら、簡易的な計算方法で言うと「0.5%×婚姻年数(*)」で離婚率を求める必要があります。
つまり、年齢を考慮しない平均の離婚率で計算すると、婚姻期間別の離婚率は以下のようになります。
- 1年で離婚する確率・・・0.5%×1年=0.5%
- 10年で離婚する確率・・・0.5%×10年=5%
- 20年で離婚する確率・・・0.5%×20年=10%
- 30年で離婚する確率・・・0.5%×30年=15%
- 40年で離婚する確率・・・0.5%×40年=20%
年齢別の実際の離婚率は若年層ほど高くなる
先に紹介した「年齢別の離婚率」は「1年間に離婚した夫婦全体の中でどの年齢が多いのか」という計算でした。
しかし、この計算だと既婚者が多い年齢層の離婚率が必然的に高くなってしまいます。
「この年齢層の既婚者のうち何組に1組が離婚しているのか」は有配偶離婚率によって求められます。以下は2015年の年齢別の有配偶離婚率です。
参考元:人口統計資料集(2018) Ⅵ.結婚・離婚・配偶関係別人口 表6-11 性,年齢(5歳階級)別有配偶者に対する離婚率:1930~2015年|国立社会保障・人口問題研究所
※計算方法:その年の年齢別の有配偶人口あたりの1年間の離婚件数
特に目を引くのが、15~19歳の既婚女性の離婚率の高さです。表記は‰なので、15~19歳の既婚女性1000人中82人、つまり1年間で約12人に1人(約8.3%)が離婚しています。数字で表すと、15歳で結婚した女性が19歳までに離婚する確率は「8.3%×5年=約41.5%」という事ですね。
いわゆる「できちゃった結婚(授かり婚 )」をした未成年の女性が、結婚後すぐに離婚してしまうケースが多いと言われています。
一方で、年齢を重ねれば重ねるほど離婚率が低くなっていることも分かりますね。
まとめ
日本は離婚率が高くなっているイメージがありますが、こうして色々な角度から検証すると、世間で言われるほどには離婚率が高い国ではないように思えますね。
特によく目にする「3組に1組」と違い、実際は「年間で200組に1組」が離婚しているという結果になりました。
これが多いか少ないかは個人の捉え方次第ですが、「離婚件数」も「普通離婚率」も「有配偶離婚率」も、2000年以降下がっているのは事実です。
離婚は決して喜ばしいことではないので、このまま離婚率が下がっていってほしいものですね。