「障害を患ったら個人型確定拠出年金(iDeCo)の取り扱いってどうなるの?」
この点、個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)では一定の条件を満たせば”障害給付金”として給付を受けることができます。
今回の記事では、iDeCoの障害給付金の支給要件をまとめるとともに、障害と確定拠出年金にまつわる色々な疑問を解消していきたいと思います。
まずは支給要件から。
iDeCoの障害給付金の支給要件
障害給付金は、加入者または加入者であった者(運用指図者含)が、障害認定日(*)から70歳に達する日の前日までの間において、その障害の状態が政令で定める程度の障害に該当する事となった時に“請求”することができます。
注:ここでの”治る”は、症状が固定した日の事です⇒(くだけて言うと)これ以上治療しても効果の改善が見込まれないと判断された日も含みます。
- 障害基礎年金1級・2級
- 身体障害者手帳1級~3級
- 療育手帳(重度の者に限る)
- 精神保健福祉手帳(1級及び2級の者に限る)
障害基礎年金の認定基準に関しては「障害年金の対象となる病気やケガにはどのようなものがありますか。|日本年金機構」や「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|日本年金機構」を参照して頂ければと思います。
障害給付金の金額はいくら?
障害給付金の金額は「iDeCoの個人別管理資産額」全てです。
iDeCoは、公的年金ではなく個人が老後の為に積み立てておく私的年金ですので、障害に該当したからといって何かしら増額されるといった事はありません。
あくまでも、自分が積み立てておいたお金が返ってくるイメージです。
但し、iDeCoの障害給付金の受給を始めると加入者ではなく”運用指図者”になるので掛金は拠出できなくなります。この点は注意が必要です。
障害給付金にかかる税金は?
障害給付金は非課税です。
一時金で受け取ろうが、年金で受け取ろうが、一切の税金がかかりませんのでこの部分に関しては確定申告の必要もありません。(参考:個人型年金規約第106条2項、確定拠出年金法第32条2項)
何歳から受給できるのか?受給権が発生したら必ず請求しなければならないのか?
障害給付金は障害認定日から70歳に達する日の前日までの間に”請求”すればよいので、iDeCoの口座に資産があるのならば何歳からでも受給できます。
老齢給付金のように60歳にならないと引き出せないという事はありません。30歳で請求しても良いし、60歳以降に請求しても構いません。
参考:確定拠出年金が引き出し可能になる年齢は何歳から?【老齢給付金】
なお、念のため書いておきますがiDeCoの障害給付金の受ける権利があるからと言って、受給権が発生した時点ですぐに”請求”しなければならないわけではありません。70歳に達する日の前日までの自分の好きなタイミングで請求してOKです。
障害給付金での受給は”非課税(無税)”ですから、経済的に余裕がある方は出来る限りiDeCo口座の資産を増やしてから受給した方が金銭的にはお得ですよ。
障害給付金の受け取り方法(年金or一時金)
- 年金(5年~20年 *)
- 一時金
- 年金と一時金の併用
* 年金として受け取る場合の年数は、原則としては老齢給付金の場合と同様に5年~20年なのですが、60歳になる前に障害給付金の受給を始めた場合には「5年~20年+受給権を獲得した日から60歳までの年数」が有期年金として設定できる期間になります。(参考:個人型年金規約122条3項)
なぜ「受給権を獲得した日から60歳までの年数」が加算されるのかというと、簡単に言うと、そもそも障害給付金は60歳前から受け取る事が想定されているからです。
この場合、老齢給付金と同じように「5年~20年」としてしまうと、60歳前に支給が終了してしまうことになりかねず、老後資金を貯める!という確定拠出年金の意味がなくなってしまうからです。
また、コレにより障害給付金は受け取る期間が長期間になる可能性があるため、老齢給付金では1度決定すると原則として変更することができない受取計画を5年毎に変更することができますし(参考:個人型年金規約第122条1項)、運用により資産額が大幅に減少した場合にはいつでも受取計画を変更することが可能です(個人型年金規約第123条1項)。
障害と個人型確定拠出年金にまつわる疑問
以下、障害給付金にかかわらず”障害”と”確定拠出年金”の関係性も踏まえて、細かい部分を紹介していきます。
既に公的年金の障害年金を貰っている人でもiDeCoの加入者になれる?
障害基礎年金・障害厚生年金を既に受け取っている場合でもiDeCoの加入者になることは可能です。
本来、国民年金保険料の免除を受けている人はiDeCoの加入資格がありませんが、障害による法定免除の場合は問題なくiDeCoに加入できます(参考:個人型確定拠出年金の加入資格)。
また、障害厚生年金を受け取っている場合でも、現状企業に勤めて厚生年金の被保険者となっている人は保険料を他の方と同様に支払っていますので、この場合も当然加入資格があります。
但し、iDeCoの障害給付金の受給を始めると加入者ではなく”運用指図者”になるので掛金は拠出できなくなります。この点は注意が必要です。
なお、障害給付金の支給要件を満たす障害を持っている人がiDeCoに加入する場合は、障害の状態等を証明する書類が別途必要になってきますので、どの書類が必要なのか詳細は運営管理機関に問い合わせてみて下さい。
iDeCo加入前に発生した障害でもiDeCoの障害給付金の支給要件を満たすのか?
iDeCo加入前に発生した障害(初診日がiDeCo加入前、障害認定日がiDeCo加入前など)でも、支給要件のところで記載した障害の状態に該当すれば、障害給付金の支給要件を満たします(参考:確定拠出年金Q&A No153)。
障害給付金の受給開始後に障害が軽くなった場合の取り扱いは?
公的年金の場合は受給開始後に障害が無くなったり軽くなると、支給額が減らされたり支給が打ち切りになることがありますが、確定拠出年金の場合は受給開始後に障害が無くなったり軽くなっても、”障害給付金”として受け取りを続ける事が可能です。(参考:確定拠出年金Q&A No155)
従って、一度障害給付金として受給を始めた方はずっと非課税で給付を受けられるという事です。
障害給付金の受給者になっても掛金は拠出できるの?
障害給付金を受給しながらも”加入者”として掛金を拠出し続ける事ができるのか?(運用指図者にはならないのか?)という質問です。
これが可能となると、拠出した掛金は所得控除として取り扱われ、更に受給する障害給付金に関しては非課税ということで、税金的には非常に優遇される事になります。
この点、障害給付金を受給することがiDeCoの加入者資格の喪失要件に該当するか否かがポイントになってくるのですが、加入者資格の喪失要件を規定している「確定拠出年金法第62条3項、個人型年金規約第36条」では”障害給付金を受給すること”は加入者資格喪失の要件として規定されていません。
従って、法律上は障害給付金を受給しながらも加入者として掛金を拠出することが可能と考えられます。
後述する企業型DCでは事業主掛金の拠出がOKと厚労省が答えていることもあり、iDeCoでも掛金の拠出は可能だと思いますが、運営管理機関独自に制限を加えている可能性もあります。
企業型DCの障害給付金はどうなのか?
企業型DCの場合も基本的にはiDeCoの障害給付金と同じ考え方でも構いません。
なお、iDeCoでは障害給付金を受給し始めると運用指図者となり新たな掛金を拠出することはできませんが、企業型DCの場合は障害給付金を受給していても規約に定められた加入者資格を喪失していない限り、事業主による掛金の拠出は継続できます(参考:確定拠出年金Q&A No154)。
まとめ
今回の記事の大事なポイントをまとめると以下のようになります。
- 障害給付金は障害基礎年金の受給資格のある人がもらえる(他にも要件あり)
- 障害給付金の金額は本人のiDeCoの個人別管理資産額
- 障害給付金は非課税
- 70歳の前日に達する日まであれば何歳からでも受給可能
本文でも書いていますが、確定拠出年金の場合は障害を負ったとしてもすぐに障害給付金として受給しなければならないわけではなりません。
本人が請求するまでは加入者として掛金を拠出することができます。障害給付金は全て非課税になりますので、ある程度資産残高を増やしてから請求したほうがお得になるかもしれませんね。