2017年8月1日から年金受給に必要な資格期間が25年から10年に短縮されました!
今まで最低でも25年払う必要があった年金が10年で貰えるようになったわけですから、国民としては嬉しい限りです。
しかし、残念ながら年金は10年払ったらOKという代物ではありません。10年払っただけでは将来貰える年金は雀の涙のような金額ですし、なにより全ての年金の受給資格期間が10年に短縮されたわけでは無いからです!
年金制度を正しく理解していないと、ご自身だけでなくあなたの家族にまで迷惑がかかってしまう恐れがあります。
この記事でしっかりと理解を深めて、必要な手続があれば手続をするようにして下さいね!
老齢年金をもらうために必要な受給資格期間は10年!
2012年8月に年金機能強化法が制定されたことにより、2017年8月1日から老齢年金を受け取るために必要な期間(受給資格期間)が25年から10年に引き下げられました。
これまでは25年無いと年金が貰えなかったので、どうせ保険料を支払っても貰えないんだから・・・と、保険料の納付を放棄してしまう人もいたでしょうから、これは大きな改正ですね。
ちなみに、厚生年金に関しては、国民年金と合わせた受給資格期間が10年以上あれば、1月以上の厚生年金加入期間があるだけで受給資格を満たしますよ。(注:ただし、特別支給の老齢厚生年金を受給する為には厚生年金への加入期間が1年以上必要です。参考:厚生年金保険法附則14条)
国民年金の加入期間10年で年金はいくらもらえる?20年・30年・40年も合わせてチェック
では、10年保険料を払うとどの程度の老齢基礎年金がもらえるのか?計算してみましょう。(便宜上、このセクションは保険料納付済期間以外は全て未納と考えて計算します)。
この場合の、老齢基礎年金受給額の計算式は以下の通りです(参考:老齢基礎年金の計算方法|日本年金機構)。
* 480月は国民年金に加入できる最大期間。
計算結果がこちら(* 小数点以下四捨五入)
納付期間 | 年間支給額 | 月額に換算した額 |
---|---|---|
10年 | 195,025円 | 16,252円 |
20年 | 390,050円 | 32,504円 |
30年 | 585,000円 | 48,750円 |
40年 | 780,100円 | 65,008円 |
最低ラインである10年しか納付しなかった場合には年間195,025円しかもらえません。78万円でも決して十分とは言えないのに、年20万円弱では老後の生活費にはとても足りません。
あとでも述べますが「10年納めればOKなんだ!」と安易に勘違いしないようにして下さいね。
【参考】免除期間ある場合は計算方法が少し変わる(猶予期間は追納しない限りゼロ円)
先程のセクションでは保険料納付済期間以外はすべて未納と考えましたが、保険料免除期間があると計算が少し複雑になります。
というのも実は、保険料の免除を受けていた期間は「国庫負担分」の基礎年金が受け取れるからです。国庫負担分は平成21年3月分までは年金額の1/3、平成21年4月以降は1/2です。
一方で「猶予」は違います。学生納付特例や若年者猶予を受けている人は要注意。猶予は免除とは違うので、猶予分を追納しない限り国庫負担分が受給額に反映されることはありません(参考記事:学生納付特例で猶予を受けていた期間は追納すべきか)。
免除期間がある場合の計算の具体例は「5分で分かる!国民年金(老齢基礎年金)はいくら貰えるか?【記事未了】」で書いていますので、そちらもご参照下さいね。
参考:老齢年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)|日本年金機構
参考:老齢年金(昭和16年4月1日以前に生まれた方)|日本年金機構
【重要】10年払ったらOKと安易に勘違いしてはいけない理由
先程も書きましたが、老齢年金の受給資格期間が10年になったからと言って「10年だけ加入すれば良いのか!」と勘違いしてはいけません。
10年だけ加入しても年金はほとんど貰えないことに加えて、以下のような注意点がありますよ。
遺族年金の受給資格期間は短縮されていない
遺族基礎年金の受給要件はいくつかありますが(参考:遺族基礎年金の受給要件|日本年金機構)、
老齢基礎年金の受給権者が亡くなった場合に、遺族年金が支給されるのは、その亡くなった人の受給資格期間が25年以上ある場合です(参考:国民年金法第37条1項3号)。
つまり、老齢年金の受給資格期間は10年に短縮されましたが、遺族年金の受給資格期間は短縮されていないのです。
障害年金の受給要件も変更なし
遺族年金と同様に障害年金の受給要件も変更されていません。(受給要件は障害基礎年金の受給要件|日本年金機構でご確認下さい)。
10年払ったからもう未納でいいや!と放置していると、障害年金ももらえなくなる可能性があるので注意が必要です。
未納だと強制執行や差し押さえの対象になる
年金制度への不信感から年金を納めない方が増えています。しかし、加入義務のある年金を納めずに放置していると、保険料の強制徴収や差し押さえの対象となってしまいます。
参考:国民年金の強制執行基準は厳格化の流れ
参考:国民年金滞納時の督促・延滞金・差し押さえをマルっと解説【記事未了】
予期せず財産の差し押さえ等が行われると、日々の生活の資金繰りが大きく狂ってしまいます。払う余裕がある方はキチンと支払い、払う余裕がない方は「免除・猶予制度」を活用するようにして下さい。
自分の保険料納付済期間や免除期間を確認する方法
これまで”基礎年金受給額の計算方法”や”10年だけ払っても意味がない理由”などを見てきましたが、
実際自分はどれくらいの加入期間があるのか?分からない方もいると思います。その場合は以下の3つの方法でご自身の加入期間が確認できますよ!
<<方法①:年金事務所の窓口で確認>>
自分の年金手帳と本人確認書類(免許証かマイナンバーカード)を持って相談に行けば確認可能です。年金事務所は混雑していることが多いので、窓口で確認するなら予約推奨です。
参考記事:年金事務所に相談に行くなら予約は必須!
<<方法②:ねんきん定期便で確認>>
毎年誕生月に、自分の年金記録が記載された「ねんきん定期便」が送付されてきます。以下のような形式です。
参考:プロが教える年金定期便の見方!将来いくらもらえるのか簡単チェック【記事未了】
<<方法③:ねんきんネットで確認>>
ねんきんネットに登録していれば、以下のような感じでネット上で年金記録が確認できます。
ねんきんネットでは、年金記録だけでなく受給額シミュレーションや追納申込書等の作成も可能です。非常に便利なので、まだ登録していない方は登録しておきましょう!
参考:とっても便利!ねんきんネットの登録の仕方【記事未了】
加入期間が10年に足りていない人は「国民年金への任意加入」「厚生年金への加入」で対応可
国民年金の加入可能期間は原則として20歳~60歳までの40年間です。
では、60歳を過ぎて加入期間が10年に足りていない場合、絶対に年金をもらうことは出来ないのか?と言うと、そんな事はありません。
「①国民年金への任意加入」「②厚生年金への加入(任意加入含)」の2つの方法を利用すれば、あなたの加入期間を増やし、受給資格期間を満たすことが可能です。
方法 | 補足 |
---|---|
①国民年金に任意加入する | 国民年金は65歳まで任意加入が可能です。65歳を過ぎても受給権が無い(10年に足りない)場合は、特例任意加入制度の利用も出来ます。(参考:国民年金の任意加入被保険者とは?)。 |
②厚生年金に加入する | 厚生年金は70歳未満の人は原則として被保険者になります。また、70歳時点で受給権がない場合は高齢任意加入制度の利用が可能です。(参考:70歳以上でも厚生年金に加入できる「高齢任意加入被保険者」とは?)。 |
「②厚生年金への加入」は、実際に企業に雇用される必要があるため少し大変かもしれませんが、国民年金だけでなく厚生年金分の年金受給額も増えますよ。
まとめ
繰り返しになりますが、受給資格が10年に短縮されたのは老齢基礎年金だけです。
その他の年金の受給資格は変わっていませんし、「10年払ったし放置でいいや」と思っていると、将来的にもらえる年金額は非常に少ないですし、非常の遺族年金や障害年金ももらえません。
できる限り保険料は払うようにし、もし経済的な理由で払えないのであれば保険料免除制度や納付猶予制度をしっかりと活用しましょう。
なお、今回の受給資格期間短縮により受給権が発生した方は下記ページで公式の案内をチェックして手続を行ってくださいね。
⇒必要な資格期間が25年から10年に短縮されました|日本年金機構
⇒新たに年金を受けとれる方が増えます(受給資格期間25年→10年) | 厚生労働省