「仕事を辞めて無職になったら国民年金の納付書が届いた・・・こんなのお金ないから払えない!」
無職になると急に収入が無くなるので、お金のやりくりには苦労させられますよね。
今までは会社が給料から年金(厚生年金)を天引きしてくれていたので、特に気にならなかったかもしれないですが、仕事を辞めると自宅に国民年金の納付書が届く様になり、自分で保険料を納付しなければならなくなります。
国民年金は毎月16,340円(平成30年度)を納付しないといけないので(参照元:日本年金機構)、無職の期間中は結構キツイですよね。
しかし、心配いりません。国民年金には、仕事を辞めて無職になった方には嬉しい免除制度が用意されています!
そこで、ここでは仕事を辞めて無職になった際の国民年金について見ていきましょう。
【はじめに】無職になったらまずやるべき手続きは?
この記事では、仕事を辞めた方の国民年金について書きますが、その前に無職になったらまずやるべき手続きについて簡単に確認しておきましょう。国民年金にばかり気を取られてしまうと他の手続きを忘れてしまいますからね。
仕事を辞めて無職になったら、のんびりぼーっと過ごしていいという訳ではありません。今までは勤務先が色々手続きをしてくれていたのを、次の勤務先が決まるまでの間は自分でしなければならないですからね。
税金や保険関係に関していうと、退職後は主に以下の手続きが必要です。
- ①離職票と年金手帳を勤務先から受け取る
- ②ハローワークにいって失業給付金の手続きをする
- ③社会保険から国民健康保険・国民年金に切り替える
- ④翌年の2月16日?3月15日の間に確定申告をする
勤務先を退職したらまずは、離職票をもらいます。これは、「会社を辞めて現在無職です!」という事を公的に証明する為に必要な書類です。役所で提出を求められる事が多いので、必ず受け取って大事に保管しておきましょう。
また、大きな会社になればなるほど年金手帳を会社が預かっているケースが多いです。これも大事な書類なので返してもらった上で大事に保管しましょうね。
次に、離職票を持ってハローワークへいき、失業給付金の支給申請をしましょう。雇用保険に加入している場合(といっても義務なので通常は加入していますが)、勤務時の給料の6割程度を一定期間(※)もらう事が出来ますよ。
※:もらえる期間は年齢や在籍期間、退職理由によって異なります。
そして、会社で社会保険に加入していた方は、退職時に保険証を返していますよね?退職してそのまま放っておくと、無保険の状態になってしまいます。
健康保険証が無い状態で病気や怪我をすると、病院で保険が使えず医療費が高額になってしまいますので、必ずすぐに区役所等で手続きをする様にしましょうね。
なお国民年金は加入が義務なので、手続きを怠ったとしても会社を辞めた翌日から自動で加入となります。ただし、手続きをしなかったら「免除」が受けられなくなってしまうのでこれも重要です!(←この記事はここの部分がメイン)。
最後に、退職したら会社に年末調整をしてもらう事ができません。勤務先が発行する源泉徴収票を使って自分で確定申告するのを忘れずに。ただし、同年内に新しい勤務先への就職が決まった場合は、新しい勤務先で前勤務先の給料分も合算して年末調整をしてくれるので不要です。
無職(フリーター)でも払うべき税金や年金、一体いくらぐらいある?簡単に金額をおさらい!
生きていく上で絶対に必要なもの、それは「衣・食・住」ですね。それらにかかるお金は、何としても確保しなければなりません。
しかし、それとは別にみなさんが払わないといけないものがあります。それが、税金や保険料です。
税金や保険料は、職業に関わらず負担しなければなりません。例え会社の社長でも、無職・ニート・フリーターでもです。
特に、会社に勤めいていて無職になった方は、今まで会社が給料から天引きをしていてくれたものが急に役所から届く様になり、焦るケースが多いので要注意。
なお、税金や保険料とは、具体的には以下の様なものを指しています。
項目 | 内容 |
---|---|
所得税 | 各年の所得金額に応じて所得金額の5%〜45% |
住民税 | 前年所得の10% |
国民健康保険料 | 前年の世帯所得や人数に応じて発生 |
国民年金保険料 | 毎月定額で発生(平成30年度は16,340円) |
「無職=収入がない」事が前提なので、所得税については無職になってからは発生しないでしょう。
しかし、住民税や国民健康保険料については前年の所得に応じて課税されるので、例えば平成29年は働いていて、平成30年に無職になった様な場合は、平成30年は住民税や健康保険料を通常通り負担しなければなりません。
なお、平成30年に収入がないまま平成31年以降も無職だった場合は、住民税や国民健康保険料については最低限の金額(均等割や平等割のみ)となります。
ちなみに、国民健康保険は前年の所得が一定水準以下の場合に保険料の減免を受けられる制度があります。自治体によって扱いが異なるので、詳細はお住まいの自治体に確認する様にしてください。
参考:扶養家族が多い場合は、2年間の任意継続をした方がいいケースもあります。
また、住民税についても減免制度を用意している自治体があります。条件を満たせば住民税の額を減らしてもらう事ができるので、一度問い合わせてみるといいでしょう(自己都合退職の場合は減免が受けられないケースが多い様です)。
最後に国民年金についてですが、国民年金は毎月定額で発生するものなので、基本的には退職をすると厚生年金から国民年金に切り替えた上で、毎月納付をすることになります(年間約20万円)。
ただし、国民年金は以下で説明する様に、無職になって納付が困難な場合は免除してもらう事が可能なのです!
無職の場合は「退職(失業)による特例免除」で国民年金保険料の免除が可能!
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
「無職でも原則として国民年金は払わなければならない」と上で書きました。しかし、そうは言っても無職の方は預金を取り崩して生活していかなければならなので、できれば支出を減らしたいですよね・・・。
そこで、失業中でお金がない方は申請をすれば国民年金の納付義務を免除してもらう事ができるのです!しかも、免除期間中は年金の受給資格期間にカウントされるので、将来年金がもらえるかどうかの判定に影響ありません!
参考:国民年金は、受給資格期間が10年(120ヶ月)以上ないと将来年金をもらう事ができません。従来は25年(300ヶ月)でしたが、平成29年8月から10年に短縮されています(参照元:日本年金機構)。
厚生年金の場合は給料に応じて保険料の金額が変わりますが、国民年金は全員一律の保険料です。そこで、収入が少ない方のために免除制度を設けているという訳ですね。
具体的な免除制度は以下の2つ。
- ①保険料免除制度
- ②失業による特例免除
①の保険料免除制度は、前年所得が少ない方が利用する免除制度です。前年(1月〜6月に申請する場合は前々年)の所得金額に応じて以下の免除が受けられます。
免除度合い | 基準 |
---|---|
全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円の範囲内 |
4分の3免除 | 78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等の範囲内 |
半額免除 | 118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等の範囲内 |
4分の1免除 | 158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等の範囲内 |
基準の計算式だけだと少し分かりにくいので、扶養人数ごとに目安の所得を表にしておきますね(括弧内の金額は目安の給料)。
免除度合い | 2人扶養 (夫婦+子供1人) | 1人扶養 (夫婦のみ) | 扶養なし (単身世帯) |
---|---|---|---|
全額免除 | 162万円 (257万円) | 92万円 (157万円) | 57万円 (122万円) |
4分の3免除 | 230万円 (354万円) | 142万円 (229万円) | 93万円 (158万円) |
半額免除 | 282万円 (420万円) | 195万円 (304万円) | 141万円 (227万円) |
4分の1免除 | 335万円 (486万円) | 247万円 (376万円) | 189万円 (296万円) |
→国民年金の免除申請をする時の所得・収入条件とQA・・・記事未了
退職後の収入が上記の金額の範囲内であれば、国民年金保険料の免除を受ける事が可能ですよ。
たまに心配する方がいる様ですが、失業保険と国民年金は全く別の制度です。それに失業保険は所得扱いされない(雇用保険法第12条)ので、仮に失業保険をもらっていても国民年金の免除は問題なく受けられますよ。
しかし、会社に勤めていた方は、前年に収入があるので前年の所得を基準に免除の可否を審査されてしまうと、免除が受けられなくなってしまいますよね。
そこで、社会保険加入者が失業した場合の救済をする為に、②の特例が用意されています。「失業による特例免除」では、免除基準以上の所得が前年にあったとしても、前年の所得はゼロだったとみなしてくれます。
従って、この特例を利用すれば、基本的に仕事を辞めた方は一定期間保険料が免除されるのです(免除が開始したときから翌年の6月末まで。翌年以降については役所によって異なりますが、一般的に2年目までは失業特例が使える様です)。
なお、免除が受けられるか及びどの免除に該当するかは、「本人・世帯主・配偶者」の所得を元に判定します。
従って、「夫:サラリーマン、妻:専業主婦」のケースで夫が退職した場合は免除に該当するでしょうが、「夫:サラリーマン、妻:OL」のケースでは夫が仕事を退職しても免除にならない事もあります(その場合は、夫は妻の社会保険上の扶養に入れますけどね)。
参考:世帯主や配偶者の前年所得を排除する為に、世帯分離をするのもアリですね。世帯分離すれば健康保険料の減額も可能です。
失業による特例免除の手続きや必要書類は?手続きをしないと国民年金の納付義務は無くならない!
仕事を辞めて、国民年金の保険料を納付するのが困難な場合に利用できる免除制度を紹介しましたが、これらはあくまでも「きちんと手続きをすれば」の話です。手続きをしなければ通常通り保険料の納付義務があります。
また、申請をすれば誰でも免除されるという訳ではなく、審査もあります。無職だから免除してくれるのではなく、所得がなくて納付が困難だから免除してくれる、という事を忘れずに。
「無職になったから国民年金は払わなくていいや」という考えは通じないので、国民年金を納付するのが金銭的に辛いのであれば、すぐに区役所等で手続きをする様にしましょうね。
前年の所得金額や滞納期間にもよりますが、未納のまま放っておくと督促や差し押さえをされる可能性がありますよ。
→国民年金を滞納したらどうなるの?督促・延滞金・差し押さえまでマルっと解説
また、未納の場合は万が一障害者になったとしても障害年金が貰えません。
あとで後悔しない為にも、払えないのであれば迷わずに区役所等で手続きや相談をする様にしましょうね。
では、具体的な申請手続きについて見ていきましょう。といっても手続き自体はとても簡単ですよ(関連記事:国民年金保険料の免除申請方法や必要書類)。
手続き・申請場所
国民年金の免除申請(失業による特例免除)は、お住まいの区役所等の保険年金業務担当窓口で行います。
なお、怪我等で窓口に行くのが困難な方は、郵送でも申請することはできます。ただし、不備があるといけないので、事前に電話で手続きの相談をした方がいいでしょう。
必要書類
失業による特例免除申請をするには、以下の書類が必要です(自治体によって多少異なるケース有り)。
- 国民年金保険料免除・納付猶予申請書(窓口で貰えます)
- 年金手帳又は基礎年金番号通知書
- 雇用保険受給資格者証の写しまたは雇用保険被保険者離職票(※)等の写し
- 印鑑
- 本人確認書類
※:先にハローワークに行って失業給付の手続きをした場合は、離職票は提出してしまっているので手元に有りません。ハローワークに離職票を提出すると代わりに雇用保険受給資格者証がもらえます。
厚生労働省が「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」の記載方法を動画で紹介しているので、参考に貼っておきますね。
申請が可能な期間
免除の申請年度は、「7月から翌6月末」です。従って、10月に免除が認められた場合、10月から翌6月末までの保険料が免除される事になります。
なお、保険料の免除は納付期限から2年は遡って適用する事が出来るので、手続きを忘れていたとしてもそこまで焦る必要はありません。ただし、既に納付した月分を遡って免除にしてもらう事は出来ないので注意しましょう。
申請から免除までにかかる期間
免除の申請をしてから審査をして実際に免除されるまでには、数週間程度、長いと3ヶ月近くかかる事もあります。
この期間中は保険料が未納状態になり、催告状などが郵送されてくるのですが、送られてきても気にする必要はありません。無視しておきましょう。
無職になって国民年金を免除してもらうデメリットは?
無職でお金がないのに、毎月国民年金を払い続けるのは辛いですよね。そういう意味では、無職の期間中は免除制度を積極的に活用した方がいいでしょう。
国民年金を免除してもらっても、年金の受給資格期間には算入してもらえるので、年金が貰えなくなるという事はないですしね。
しかし、免除制度はいいことばかりではありません。
なぜなら、免除期間中は年金の受給資格期間には含まれるのですが、保険料を払っていないので将来もらえる年金が少なくなってしまうのです。
これは当然の話です。全額納付したのと全額免除を受けたのが同じ扱いだったら、誰も納付しないですよね。
免除期間があると、どれくらい年金が減るのかという点については、以下の表を参考にしてください。
免除度合い | 支給額 |
---|---|
全額免除 | 全額納付した場合の年金額の1/2 |
4分の3免除 | 全額納付した場合の年金額の5/8 |
半額免除 | 全額納付した場合の年金額の6/8 |
4分の1免除 | 全額納付した場合の年金額の7/8 |
ちなみに、平成30年度は仮に40年間保険料を毎月納付していた場合、満額の779,300円(月約6万5千円)が支払われることになりますが、40年間ずっと免除されていた場合は、389,700円(月約3万2千円)です。
月3万円というのはさすがに少ないですね・・・これは極端な例ですけどね。
免除制度に甘んじ過ぎると、老後になってから自分が困ってしまうので可能な限り免除期間は短くしたいですね。
なお、免除された期間の保険料については、過去10年の間の免除期間分という制限はありますが後から納付する事ができます(追納制度)。再就職等をしてお金に余裕ができたのであれば、将来もらえる年金を増やす為に追納するかどうかの検討をした方がいいでしょう。
また、上記記事でも書いていますが、追納や後納をする場合には、納付期限から過ぎた期間に応じて所定の割増金が加算されます。納付されていなかった期間、年金基金での運用ができないわけですから、その分が上乗せされるというイメージですね。
なので、もし払えるのであれば払っておいたほうが金銭的には若干得をします。
【補足①】無職で収入が無く年金等を払っているだけの場合は確定申告をしなくてもいいの?
上で、「仕事を辞めた年は前の勤務先から発行された源泉徴収票を使って確定申告しなければならない」と書きました。
これは、勤務先を退職したことにより毎年会社がやってくれていた年末調整手続きがなくなる為、自分で税金を確定させなければならないからです。
ただし、基本的に会社がきちんと源泉徴収をしている限りは、確定申告をすると源泉徴収された所得税が還付されることになります。従って、退職して無職になった方が確定申告をするのは、所得税の還付をしてもらう為、と考えておくといいでしょう。
無職でお金のやりくりに困っている状態でしょうから、是非確定申告をしたいところですね。確定申告をする際は、国税庁のイータックス(e-Tax)が便利ですよ。
以下の必要書類を用意して、パソコンで確定申告をしましょう。画面に従って進めば簡単にできます。
- 前の勤務先から発行された源泉徴収票
- 退職後から年末までに払った国民健康保険料の合計金額がわかるもの(領収書等)
- 社会保険料(国民年金)控除証明書
- その他(生命保険料等)の控除証明書
- マイナンバーカード(もしくは通知カード)
では、会社を退職した翌年以降も無職で無収入だった場合はどうするのでしょうか?無収入でも確定申告は必要なのでしょうか。翌年以降は還付される税金も無いので、申告をする必要はなさそうに感じますよね。
この点、所得税の確定申告をする義務が有るのは、課税所得のがある方です。逆に言うと、課税所得が無いのであれば確定申告をする必要はありません(参照元:国税庁)。
しかし、確定申告をしなかった場合、対税務署的には特に困らないですが、対行政的には損をする可能性があります。というのも、確定申告をしなければ行政側はその人の所得がいくらなのか分かりません(所得が無いのか、所得が有るのに申告をしていないのか)。
その結果、所得をゼロとして申告していれば受けられたであろう健康保険の減免措置などを受け損ねる可能性があるのです(国民年金の免除制度も同様)。
従って、一時的に無職になった場合でも確定申告はした方がいいでしょう。なお、所得が無い場合は税務署ではなく市役所等で住民税の申告をすればOKです。
【補足②】無職の方は年金の払い方を一工夫!
どうせ国民年金を払うのであれば、お得な方法で払いたいですよね。
国民年金の原則的な払い方は、当月分を翌月末までに納付書を使って現金納付です。しかし、現金納付だとつい期限までに納付するのを忘れてしまいそうですよね。
そこで、口座振替によって預金口座から毎月自動で引き落としてもらう事ができます。
また、最大で保険料を2年分前納する事で、割引を受ける事も可能です。
→国民年金の前納制度の割引率(額)と最もお得な支払い方法・・・記事未了
さらに、割引率は口座振替で前納するよりも減少してしまいますが、クレジットカードで納付してポイントを貯める事も出来ますよ。割引率が減っても最近は1%以上ポイント還元されるクレジットカードが多いので、一括で払えるのであればクレジットカードで払うのが一番オトクです。
どうせ年金を払うのであれば、もっとも得する方法で払う様にしましょう!
まとめ
仕事を辞めて無職になった場合の国民年金の取り扱いについて見てきました。簡単にまとめると以下の様な感じですね。
- 勤務先を退職したら、その後の手続きは自分で役所に行ってしないといけない。
- 国民年金は毎月払わないといけないが、退職して無職になった場合、手続きをすれば免除してもらえる可能性がある。
- 免除の判定は世帯単位で行われるので、配偶者等に十分な所得がある場合は免除が受けられない。
- 免除期間中は、受給資格期間には含まれるが将来もらえる年金が少なくなってしまう。
無職になるとお金のやりくりに困る事が多いです。国民年金の免除は手続きをしないと受けられないので、免除希望の方は早めに申請する様にしましょうね。